きょう10月12日は、ノンフィクション作家の山根一眞の70歳の誕生日である。1947年、東京生まれ。獨協大学在学中よりフリーのジャーナリストとして活動を始める。1972年に初めて取材した南米アマゾンは、以後も繰り返し訪れ、人生観や環境意識に大きな影響を与えたという。これを原点に、アマゾンに入植した日本人の足跡をたどった『アマゾンで日本人はガランチードと呼ばれた』(1980年。文庫化にあたり『アマゾン入門』と改題)や、あるいは低炭素化社会をめざす新産業の創造を提唱した『環業革命』(2005年)などの著作が生まれた。
代表作にはこのほか、少女たちの書く独特の文字から社会の変化を読み取った『変体少女文字の研究』(1986年)、日本のモノづくりに携わる人々に取材した『メタルカラーの時代』シリーズ(1993年~)などがある。阪神・淡路大震災や東日本大震災に際しては、取材とともに、復興のための支援活動も積極的に行なっている。
そんな山根の厖大な仕事を支えてきたのが、情報の収集・整理術に関する貪欲な追究である。インターネット前夜の80年代半ばより、国内外のどこにいても通信衛星やネットワークに接続する仕事術を実践。90年代初めには早くもノート型パソコンを活用し、入力したデータと取材相手の記憶を照合しながらインタビューしたり、得た情報をその場で書き入れたりしていた。まさにモバイル時代を先取りしていたといえる。山根は、自らのノウハウを『情報の仕事術』と題し、「収集」「整理」「表現」の3巻に分けて上梓してもいる。1989年刊行の同書は、電子ツールに関する記述にはさすがに古びた部分もあるとはいえ、取材方法や企画の立て方、プレゼンテーション術など、いまなお学ぶところも多い。ここはぜひ、インターネットが浸透した現状にそくした新訂版を望みたい。