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ノンフィクションライター・小野一光「被害者はなぜ角田美代子から逃れられなかったのか」

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著者の小野一光氏©松澤雅彦

 死者、少なくとも11人。逮捕者は主犯の角田美代子を含む11人。「尼崎連続変死事件」は、美代子らが関わりをもった家に乗り込んでは、財産を奪い、監禁、虐待、そして殺害を繰り返した事件だ。

 ノンフィクションライターの小野一光さんは、2012年秋の連続殺人発覚後から被害者や美代子らと関係のあった人物を訪ね歩き、単行本『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』にまとめた。その出版から4年弱。発売中の『新版 家族喰い』(文春文庫)は、その後の取材をもとに新たに70頁が補われている。加えられたのは「なぜ美代子から逃れられなかったのか」だ。

「前回の取材では事件を外側から見つめることしかできませんでした。しかし裁判の中で明らかになった証言や、加害者の一部からも話を聴けるようになったことで、美代子らが家に乗り込んだときの様子や、被害者がどのような状況で暮らしていたのかを知ることができました。また、被害者たちが美代子に従い続けた理由についても徐々に分かっていったのです」

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 小野さんの取材は、美代子の影響下に置かれながら日々を克明に記録し続けた被害者のメモや、美代子の下から逃亡した男性に辿り着いてゆく。

「その男性は『結婚も、子供もいらない』と人生を諦めていました。多くの人の人生を狂わせたまま、美代子は留置施設で自殺してしまった。全ての被告が一審を終えましたが、彼らの『その後』は今後も続くのです。だから私はこれからもこの取材を続けなければならないと思っています」

新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫)

小野 一光(著)

文藝春秋
2017年8月4日 発売

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ノンフィクションライター・小野一光「被害者はなぜ角田美代子から逃れられなかったのか」

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