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「独身のまま50歳を超え引き返せない道を…」 『今夜は車内でおやすみなさい。』で小田原ドラゴンが“日本一周”に挑戦したワケ

小田原ドラゴンインタビュー

2021/04/22
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今は娯楽が多すぎて単行本が売れない

――それから『やわらかスピリッツ』(小学館)に活動の場を移して、今までの作風にはなかった、ペットとの日々を描いたエッセイ漫画『ぼくと三本足のちょんぴー』の連載を始められましたよね。

小田原 はい。ただ、それも2020年に全3巻で完結しました。『ロボニートみつお』も『ぼくと三本足のちょんぴー』も、単行本が売れないから打ち切りになった感じです。

 今はとにかく単行本が売れないと連載を続けさせてくれないんですよ。『ぼくと三本足のちょんぴー』はSNSで少し話題になりましたが、それでもやっぱり読者の方がそもそも単行本を買わなくなってきているので、そこまで売れずに終わりました。

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 今は娯楽が多すぎて、単行本を買ってまで本を読んでもらうってことのハードルが高いんですよね。読者にしてみれば、ウェブでずっと無料で読めていたものをお金出してまで買うかっていうと、やはり難しいところがあるんでしょう。

――そういった経緯がありながらも、最新作の車中泊漫画『今夜は車内でおやすみなさい。』は、約3年ぶりにヤンマガ(『ヤンマガWeb』)で連載を始められました。

小田原 ちょうどヤンマガがWeb漫画媒体を立ち上げようとしている時期に、そこで新連載をやらないかというオファーが来まして、編集者から「何かネタはないですか」って聞かれたときに「とりあえず何か言わないと」と思って…。

 そのときにぱっと思いついたのが、『ぼくと三本足のちょんぴー』で北海道に行ったときにやってみて楽しかった車中泊からヒントをもらって、「車中泊の漫画はどうですか」って提案したんです。そしたら編集の方も「いいですね」というふうになって。

 当初は完全にエッセイにするつもりでネームを描いていたんですけど、週刊連載なんで毎週毎週そんな面白いこともなくネタも思い浮かばないだろうし、毎週車中泊するのもしんどいし…。

 というやりとりを編集者とはネームの段階でしていて、最終的に自分をモデルにした「シャーク小笠原」というキャラを作って、フィクションも混ぜつつ描いていこうという話になって始まっていきました。

――セミドキュメンタリーということなので、「シャーク小笠原」のキャラは小田原ドラゴンさんそのままというより、少しデフォルメされたキャラクターなんでしょうか。

小田原 そうですね。第1話でシャーク小笠原が工場で働いているシーンが描かれますが、実際の僕自身は漫画の収入だけで生活していますし、設定は少し変えていますね。

 ただ、車中泊をして体験した内容は基本そのまま描いています。キャラの部分はフィクションでも、漫画の内容は実際に体験した本当のことを描かないと読者も興ざめする部分があると思うので。まぁウソの回もあるんですけど、それは明らかにフィクションだっていうのをわかりやすく描いていますね。