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まだ日本一周は始まったばかり

――シャーク小笠原も作中で「“この先の人生、明るい材料が見つからない? ボクも同じようなものだよ。もうひと踏ん張り頑張っていこうよ”って僕が言うことで読者の皆に響くと思う」、「そういう仲間に、ボクが日本一周することでいつもとは違った景色を見てもらいたい」と言っていましたね。

小田原 今の僕の漫画を読んでくれている読者というのは昔からのファンが多くて、その人たちがどういう人かっていうと、ほぼシャーク小笠原と同じような境遇のおっさんなんですよ。

 僕自身50歳になって「この先何もいいことないんだろうなぁ」みたいな閉塞感を感じたときに、いっそ今ある日常から逸脱して、普段あまり味わえないような体験を昔から読んでくれている読者の方に伝えられたら、楽しんで読んでもらえるんじゃないかという思いがあったんです。

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――旅先で単行本を手売りしているようですが、そうした古くからのファンと直に触れ合っていかがでしょうか。

小田原 『おやすみなさい。』を描いていた20年以上前からのファンが遠いところから来てくれて、普段は実体として見えないファンの姿が分かる、そして直接会って、話ができるっていうのはすごい嬉しいです。

 単行本は100冊持って家を出たんですけど、ありがたいことにもう60冊ぐらい売れています。そうしたら、講談社の販売部からは、「売れてるんだったら(数日後に宿泊予定のホテルに)あと200冊送るから」って無茶苦茶なことを言われて(笑)。

――車内が自分の漫画でいっぱいになっちゃいますね(笑)。

小田原 まだ日本一周は始まったばかりなんですが、自宅への到着予定日も特に考えず、何も決めずにやっています。だからグダグダなところもあるんですけど、人生は面白いところばっかりじゃないし、面白い部分だけを切り取って作るっていうんじゃなくて、「そういうグダグダなところも楽しめるように」というのを、話づくりするうえで強く意識していますね。読者の方にはそういうところも楽しんでもらえたらなと思います。

(文=二階堂銀河/A4studio)

【マンガ第1話を読む】『今夜は車内でおやすみなさい。』第1話】“結婚もせずに50を過ぎ…もう終わった人間なのか” 苦しさから飛び出したシャーク小笠原の“日本一周”