1ページ目から読む
2/2ページ目

大切なことは「ショウガナイ」「ワカリマシタ」「ガンバリマス」

 このときのインタビューで、僕が特に印象に残っているのが、「ラミレス流の日本で成功する秘訣」だった。

――ヤクルト、巨人、DeNAと13年間のNPB生活を過ごしました。日本球界で長く続ける秘訣は?

「日本の野球は日本の文化ととても密接だと思います。外国から来た選手は、一度自国の文化を忘れて、日本の文化を学ぼうとすることが大切です。外国から来て、“アメリカの野球を教えよう”という意識を持つ選手よりも、“日本の野球を学ぼう”という姿勢を持つ選手の方がアジャストできます。僕が日本で学んだのは《1・ショウガナイ》、《2・ハイ、ワカリマシタ》、《3・ガンバリマス!》、この3つのことです」

ADVERTISEMENT

――この3つの言葉、スタンスは、どうして大切なのですか?

「外国人選手にとって、どうしても受け入れ難いことは必ずあります。それを変えようとしても、変えることは難しい。だから、《ショウガナイ》と気持ちを切り替え、《ワカリマシタ》と、その事実を受け入れ、その上で《ガンバリマス》と前に進む。それを受け入れられる選手が、日本で成功するのだと思います。来日2年目ぐらいからこのことに気づいて、本当に理解できるようになったのは4~5年目かな? 特に去年(13年)のシーズンはこの3つのことを意識していました」

 インタビューを続けているうちに、「この人はとても頭のいい人なのだ」と、僕は実感していた。質問に対する答えは、常に明快でシンプルで、示唆に富んでいた。取材中、「彼はいい指導者になるだろうな」と、僕は思っていた。そして、最後の質問を投げかける。

――当面の目標は「NPB復帰」でしょうが、その先の目標は何ですか?

「もちろん、当面の目標はNPB復帰です。来年(15年)に関してはまだ全然決まっていないけど、将来は日本のチームで監督をしたいです。私にとって日本は特別な国。日本が好きだし、人々も好きだし。日本から多くのことをもらったので、自分にできることは心からお返ししたいです!」

 このとき、ラミレスは明言している。「将来は日本のチームで監督をしたい」と。まさか、このインタビューから2年後にNPBで、古巣・DeNAの監督となり、3年後にはCSを突破して、セ・リーグ代表として日本シリーズ進出を果たすことになるとは思わなかったことだろう。2年前の「文春砲」によれば、西麻布の店はすでに閉店し、14歳年上の姉さん女房とは離婚し、日本人と再婚もした。3年あれば、人生は大きく変わる。

 CSファイナルステージでは、今永昇太をプロ初となるリリーフで登板させ、シーズン中からは投手を八番打者として起用する戦術を取り続けた。日本シリーズ前日の監督会議では、ソフトバンク・工藤公康監督が提案した予告先発を拒否したという。そこにはどんな思惑があるのか? 新時代の名将・ラミレスの挑戦が、今日から始まる。セ・リーグ代表として、強敵・ソフトバンクを相手にどんな戦いを見せてくれるのか? 

 セ・リーグファンの一人として、いや野球ファンの一人として、横浜DeNAベイスターズの戦いぶりに注目したい。そして、ヤクルトOBであるラミレスの奮闘をしっかりと見届けたい。頑張れ、ラミちゃん!

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム 日本シリーズ2017」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/4505 でHITボタンを押してください。

対戦中:VS 福岡ソフトバンクホークス(松中みなみ)

※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。