【監督・プロ野球死亡遊戯からの推薦コメント】
 重要なセ・リーグ初戦はヤクルト担当の長谷川晶一さんに託します。野球をテーマに1冊の本にまとめる技術は、間違いなく現在の日本スポーツライター界のトップだと思います。ネット媒体のコラムでも、その匠の技術で唯一無二の読後感の良さ。これぞ家族で楽しめるセ界の長谷川ブランド。文春野球イベントの待ち時間に「単行本作業と連載原稿の同時進行の方法」を質問したら、囁くような甘いソフトボイスで「連載は書きだめ」と教えてくれたのも感謝してます先輩。ぜひお楽しみください!

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3年前のラミレスインタビューから見えること

 古い手帳を繰ってみると、それは2014(平成26)年2月25日のことだった。このとき、僕の目の前に座っていたのは、「ラミちゃん」こと、アレックス・ラミレスだった。

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 今から3年前のことだった。13年シーズン限りでDeNAから戦力外通告を受けたラミレスはなおも現役続行にこだわっていた。しかし、なかなか所属球団が決まらず、時間だけが流れていく中で、ようやくBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスへの入団が決まった。来日14年目を迎え、東京・西麻布に自身がプロデュースする「ラミちゃんカフェ」をオープンしたばかりのことだった。

チームを日本シリーズ進出に導いたアレックス・ラミレス監督 ©文藝春秋

 ラミレスのBCリーグ入りの背景には、「若い選手の手本となってほしい」という願いが込められていたという。そこで僕は最初に「このリーグにおいて、自分ができること、伝えられることは何だと思いますか?」と尋ねた。笑顔をたたえたまま、ラミレスが答える。

「いろいろなことを伝えることができると思います。僕は“野球とはマインドゲームだ”と考えています。70%がマインドで、肉体的な部分が30%だと思うので、こうした考え方、試合に向けての準備の仕方をまずは伝えたい。こうした考えを伝えることで、若い選手たちが次のレベルにステップアップしてくれればいいなと思っています」

 さらに、質問を重ねる。

――群馬との契約では、「いつでもNPBに復帰していい」という条項があるそうですね。

「NPBからオファーが来て、交渉がまとまれば復帰してもいいという契約を結びました。その点は、オーナー、チームにとても感謝しています。NPB12球団のみなさん、いつでもオファーを待っていますので、よろしくお願いします(笑)」

 ときおり冗談を交えながら、ラミレスは饒舌に語り続ける。笑顔の絶えない、ほのぼのとした時間が流れていた。01年に来日したラミレスは、ヤクルト、巨人、DeNAとセ・リーグ3球団に在籍していた。続いて、それぞれのチームカラーを尋ねる。

――ヤクルト、巨人、DeNA。在籍したそれぞれのチームの印象は?

「当時のヤクルトはとても家族的なチームでした。特に仲がよかったのはイワムラ(明憲)。彼はまだ若かったのに外国人を誘って、よく食事に連れて行ってくれました。フルタ(敦也)さん、ミヤモト(慎也)さん、タカツ(臣吾)さん、イナバ(篤紀)さん……、他にもいい仲間がいっぱいいました」

――では、巨人のチームカラーは?

「ジャイアンツはいろいろなことに厳しく、たくさんのルールがあるチームだと思って移籍しました。でも、すぐに(阿部)シンノスケと仲良くなりました。オガサワラ(道大)さん、タカハシ(由伸)さんもすごくよくしてくれました。ジャイアンツには4年間在籍したけど、やっぱり、プロとして一番厳しいチームだという印象を持ちました」

――では、DeNAでの2年間にはどんな印象がありますか?

「チームが新しくなり、新しいオーナー、監督、コーチ陣でスタートしました。自分としても新たなチャレンジだったし、才能あふれる若い選手も多かった。近い将来、優勝できる可能性があると感じています」

 この時点で、ラミレスはすでに「優勝できる可能性がある」と明言している点に注目したい。まさかこの2年後に自分がDeNAの監督となり、就任1年目でCS(クライマックスシリーズ)に進出し、さらに1年後の今年、3位からの下克上で日本シリーズ進出を決めるとは本人もまったく考えていなかったことだろう。