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川への飛び込み...いじめの「疑い」学校は見て見ぬふり

「重大事態」となった場合、学校の設置者(この場合は旭川市)か学校(爽彩さんが通う中学校)が、調査委員会を設置することになる。しかし、記事を読んだ限りでは、旭川市の教育委員会も学校も、調査委を設置した形跡はない。

「重大事態」として認められたケースでも、調査結果が、被害者や家族、遺族にとって一定の納得が得られたとしても、問題になったいじめにおける人間関係で具体的な救済があったというケースは耳にしない。しかし、クラス編成や転校、進学のとき、引き継ぎ事項となり、配慮されることがある。被害を受けた子どもが「自分が悪いわけではなかった」と納得し、次のステップに進む際の安心感を得ることもできたりする。

 校長は取材班に「家庭の問題というのは無視できない」とも答えている。4月から4回ものいじめ相談があり、6月には川への飛び込みがあった。客観的に考えて、この段階でいじめの「疑い」が生じたことは間違いない。仮に、校長が言うように家庭の問題だったとしても、児相や警察などと連携して、ケース会議を開く必要があったのではないか。学校側はいじめを隠蔽したと言われても仕方がない。佐賀県内の中学校でのいじめ問題では、関係機関が連携し、いじめ被害にあった生徒を見守っている。

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「重大事態」でも調査委を設置しない

 それ以降の、加害者やその保護者との話し合いの中でも十分な対応ができていない。加害者側の「意図」はともかく、現実としての加害行為への対処は何もなされていない。そのため、爽彩さんや爽彩さんの母親へのケアも十分ではなかった。

 また、爽彩さんが川に飛び込んでいたという点では、地域の自殺対策としても考えなければならない。「旭川市自殺対策推進計画」(2019年3月)によると、「基本方針」の中に「自殺や自殺未遂が生じてしまった場合に家族や職場の同僚等に与える影響を最小限とし、対象者をケアする取組や新たな自殺を発生させないような対応」をするとしている。自治体によっては、未遂者には保健師が関わったり、関係機関でケース会議を開催したりするが、そうした対処はなされたのだろうか。

 さらに9月になって、爽彩さんは引っ越して、転校をする。少なくとも、この段階でも「重大事態」の判断はできた。しかし、学校や市教委には、調査委を設置する動きもなく、保護者への説明があったようには見えない。きちんと調査委が設置されていれば、一定の時間はかかるかもしれないが、いじめの実態を把握でき、自殺未遂や転校との関連を指摘できたはずだ。