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きちんと調査をしない限り、今後のいじめ対策に活かせない

 不登校が続いていたのなら、学習支援やケアについての方針を話し合っていたのかどうかも検証する必要がある。いじめの二次的な被害として学習面の心配も出てくる。そうなれば、進路の悩みも出てくる可能性がある。悩みが増えてしまうのだ。

 そして、爽彩さんが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断も受けていることから、フラッシュバックなどのいじめ後遺症についても関心を持ち、注意喚起をすることも可能だったと考えられる。もちろん、調査がされても、被害者に寄り添った調査にならない場合もある。愛知県内の中学校で起きたいじめによって生徒がPTSDになった。その後、高校に進学し、そこではいじめはなかったものの、精神的に不安定な面があり、自殺したという痛ましい事件もあった。

 爽彩さんのケースは事後対応としても十分ではない。学校側は、爽彩さんへの対応に関する記録の開示に応じていない。いじめに関する資料には、日常の生徒指導を記録する「指導要録」がある。また、「いじめアンケート」やいじめに関する訴えについて共有したり、協議した記録もあるはずだ。爽彩さんが保健室に行っていたことがあれば、その「利用記録」もある。川に飛び込んでいたことを踏まえれば、「事故報告書」を作成し、市教委へ報告している可能性もある。さらに転校をしたため、「引き継ぎ記録」もあるはずだ。まずはこうした資料を母親に開示することが誠実な対応ではないだろうか。少なくとも、調査委員会が設置されれば、それらの情報を専門的に分析もできる。

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 爽彩さんが凍死したことについて、自殺か事故かは難しい判断である。ただ、いじめ防対法における「重大事態」、つまりは「生命、心身又は財産に重大な被害」があった場合に該当することは間違いない。旭川市教委と学校側は「重大事態」と判断し、調査委を設置するタイミングを何度も逃してきた。いじめ防対法は、滋賀県大津市のいじめ自殺事件を契機に成立した。何があったのかをきちんと調査しない限り、今後のいじめ対策に活かせない。

ようやく外部の第三者による調査を行うことを決定

 4月22日、旭川市は総合教育会議で「本市生徒に関わる報道事案への対応」について協議した。その結果、市教委は、外部の第三者による調査を行うことを決めた。大学教授、福祉関係者、臨床心理士、警察、弁護士などの有識者に依頼するという。その際、遺族側の推薦を考慮すべきだ。

 この事件は、複数の中学校が関係し、市内の小学生も関わっている。だからこそ、市教委が調査をすべきだ。そして、遺族の知る権利のほか、再発防止、加害児童生徒の自覚・謝罪・ケア・更生のためにも、把握すべき事実がある。

 爽彩さんと母親は何度もSOSのサインを出してきたが、その都度、その悲痛な訴えは無視されてきた。まわりの大人たちが何度も少女を救うチャンスを逃してきた。これ以上、不作為を繰りかえしてはいけない。