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1試合平均2・38点 まれに見る投手戦

 第8戦は、2点を先制された西武が6回に秋山幸二(前ソフトバンク監督)が同点2ランを放ち、本邦初公開のバック宙ホームイン。これで勢いに乗って、8回にジョージ・ブコビッチが勝ち越しの適時打。最後は工藤が締めくくって日本一に。8試合戦って、両軍の総得点が19点ずつと1試合平均が2・38点。主力投手の防御率並みで、まれに見る投手戦のシリーズでした。また、勝負が決した7試合のうち、1点差が3試合、2点差が3試合、3点差が1試合とまったく息の抜けない戦いで、選手たちの疲労も極限状態でした。

 このシリーズの最高殊勲選手は「余計なこと」をした1勝、2セーブ、1勝利打点の工藤。優秀選手賞は8試合連続安打の「ある先輩」石毛宏典とルーキーの清原和博。実は清原はこのシリーズで自打球を足に当て、後に小指が骨折していたことが判明しました。テーピングを施し、痛みに耐えて出場を続けた高卒ルーキーも日本一に大きく貢献していたのです。

 我々中継スタッフは広島市内のホテルに宿泊していました。当時はすべてデーゲームなので敗退したら即帰京するため、朝球場に向かう時にチェックアウトして荷物を預け、放送で勝利を伝えた試合後に荷物を受け取り再びチェックインと、これはこれで結構疲れたものでした。でも、良き思い出となっています。

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 最近はテレビ中継の関係ですべてナイトゲームになっていますが、かつては全試合デーゲームで行われていました。学生服の袖にイヤホンを通し授業中にラジオ中継を聴いていた中学、高校時代。「日本シリーズ放送中」の張り紙にひかれて喫茶店に入り、仕事をサボって試合を観ていたサラリーマン時代が懐かしいですね。

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