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あの歓喜から25年…星野伸之が考える今のプロ野球に足りないこと

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/16
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「イチローのところに打たせるので勝負させてください!」

 日本一を達成した1996年、首位を争う日本ハムとの対戦。2アウト二塁とスコアリングポジションにランナーを背負った場面で、一塁ベースは空いていたものの、僕の中の投手の本能が沸き立ち、どうしても次の打者と勝負がしたいと懇願したことがありました。その際のやり取りはこんな感じでした。

コーチ「勝負しても良いけど、際どいところに投げてくれ」

星野「際どいところには投げますけど、バットは届くのでボール球を打たれた場合は良いですよね?」

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コーチ「それはダメ、絶対に打たれたらダメだ」

星野「それなら敬遠の方が良くないですか?」

 こんな押し問答の末、最後は仰木監督の判断に委ねることになったのですが、打たれたらダメ、敬遠もダメ……どうしたら勝負させてもらえるのか考えて僕が出した答えが

「イチローのところに打たせるので勝負させてください!」

 もし打たれたとしても、イチローであればアウトにしてくれるという信頼できる守備の名手がいたから勝負させてもらうことができたのですが、コリジョンルールのある現在では許されることではないと思います。

 このようなことは、選手からも、ファンからも野球の面白さや醍醐味を奪ってしまっているのではないかと感じてしまうのです。

 今もしイチローが京セラドームでライトを守っていたら、ノーバウンドで低めストライクを返球するのかワンバウンドでアウトにするのか、レーザービームをどう進化させるのか機会があれば聞いてみたいと思います。

 あの歓喜から25年、ファンを魅了する伝説のプレーや選手が生まれ、熱狂的なファンと一緒に再び日本一を喜びあえる日を心待ちにしています。

◆ ◆ ◆

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