プライマリーバランス(PB)って?
【アル・シャードのライナーノーツ】
今回、マンガの方では新型コロナウイルス対策費を理由にした増税の懸念から、プライマリーバランス(PB)黒字化の問題について解説しています。
まずは用語を説明しましょう。「プライマリーバランス」は、日本語では「基礎的財政収支」などと訳されます。税収などの政府の収入から支出を引いた金額のことで、金額がマイナスならPBは赤字、プラスならPBは黒字ということになります。
ところで、なぜ政府はPBを黒字にしなければならないのでしょうか? それは、「PBの赤字が増えればインフレ率や国債の金利が制御不能なほど上昇するから」なのだそうです。
インフレ率が高いということは社会の生産能力がフル活用されていて余裕のない状態を意味します。そのような場合は、「限られた資源を民間が使うのか政府が使うのか」という懸案が発生するのです。こういう場合は政府の財政赤字は大きな問題になります。
しかし、今日の日本は長いデフレ(物価の下落)が続いたあと、現在にいたっても物価はろくに上がっていません。「長期金利」という指標に用いられる10年物国債の金利もゼロパーセント付近に貼り付いており、上がっているとは言えません。
そして、2020年4月には日本の消費者物価指数はマイナスに転じました。今は高インフレや高金利よりデフレへの逆戻りを警戒すべき状況なのです。
デフレ状態は社会の生産手段が余るので、企業の倒産や失業が起こります。たとえば、現在日本各地の病院には経営が悪化して潰れてしまうかもしれないところがあるそうです。今まで通っていた患者が新型コロナウイルスへの感染に怯えて、病院に行くのを避けた結果なのだそうです。もしこの状況で病院を潰れるままにしたら、新型コロナへの対策だけでなく、様々な医療サービスの水準が下がることは避けられないでしょう。
そして、ひとたび下がった医療水準を上げるのには大変なコストがかかります。これは医療に限った話ではありません。ほとんどの仕事は細かいノウハウの蓄積によって効率を上げているからです。仮に、同じ施設、同じ数の人員をそろえても、失われたノウハウは元には戻せないのです。
すでに、多数の企業が倒産や解雇をしているという報道がなされています。そんな状況に歯止めをかけるためにも、増税などの緊縮財政をやっている暇はありません。どれだけ現在ある社会の豊かさを残せるのか、今が勝負時なのです。