1ページ目から読む
2/2ページ目

サイバーセキュリティ基本法を通した中心人物

 さて、こうした中、各党の状況はどうなっているのだろうか。

 自民党は他の政党に比して、相対的に先んじており、サイバー戦も意識したと思われるサイバーセキュリティ人材の育成やサイバーテロ対策の強化が政権公約に記入されている。

 この分野で注目すべきは、平井卓也前衆議院議員だろう。彼は自民党きってのIT政策専門家として知られ、人材強化に力点を置いたサイバーセキュリティ基本法を議員立法で通した中心人物であり、今後のサイバー戦対策でなくてはならぬ政治家だ。

ADVERTISEMENT

 過去のインタビューで、平井氏は「サイバーセキュリティ産業全体の拡大を図りたい。産業がきちんとしていないと良い人材は出てこないですから」と話しており、これは非常に重要な視点である。

 また、自民党では、平将明前衆議院議員も注目すべき存在である。彼もまた、自民党を代表するITイノベーション政策の専門家であり、サイバーセキュリティ担当の内閣府副大臣として辣腕を振るったことから、今後の活躍も期待できるだろう。

 もう一つの与党、公明党も高く評価できる。何よりも重要インフラ防護のためにサイバーセキュリティ対策に取り組むとしていることは、非常に心強い。

 公明党のキーマンは石川博崇参議院議員だろう。防衛大臣政務官を務めた彼は、防衛省内局の若手・中堅・幹部からも信望が厚く、また、公明党のサイバー攻撃対処検討委員会事務局長として、サイバー対策問題の議論をリードしてきた。サイバーセキュリティ基本法案に際しては、(1)中小企業サイバー対策支援、(2)国民の相談体制整備、(3)地方自治体への支援などを盛り込むことを提案し、具体的なマネジメントにも注目していることは注視すべきだろう。

 希望の党の政権公約にも、サイバーセキュリティへの関心がうかがわれる点は評価できる。希望の党系で、特に注目すべきは、長島昭久・神山洋介の両前衆議院議員だろう。前者については、与党の防衛大臣経験者たちからの信望も厚く、我が国きっての外交安保通である。敵地攻撃の議論でサイバー戦の活用を主張するなど、今後も積極的に議論を主導するだろう。

 また、後者はサイバー戦問題を専門とする数少ない野党議員の一人であり、常々、サイバー戦から国全体を防衛する体制の構築・強化を強く主張している。国会質問では、「サイバー領域における自衛権解釈をしっかりと確立するべき」と迫り、答弁に困った稲田朋美防衛大臣(当時)を立ち往生させる場面もあった。

人材育成が急務だ ©iStock.com

 残念ながら、立憲民主党、社民党、共産党の公約はサイバー戦という観点からは評価のしようがない。共産党の今次選挙の政策集は65項目からなる分厚い内容だが、サイバーには一言も触れていない。

 社民党も同様だ。その政策集は、米国の全米ライフル協会や宗教右派と同様の憲法原理主義に彩られているが、サイバーのサの字もない。

 立憲民主党は一夜城もびっくりの急造政党なので酷かもしれないが、これまた憲法原理主義の一方で、サイバーについての言及はない。

 こうした状態は、日本維新の会や日本のこころといった保守政党でも同様である。彼らも戦争観という意味では、立憲民主党、社民党、共産党と似ていると言わざるを得ない。維新の党が提案した108本もの膨大な数の法案には、サイバー問題は管見の限り存在していない。日本のこころも同様である。しかも、彼らは「敵基地攻撃能力」の保有を主張しているが、ここには当然盛り込まれるべきサイバー戦能力は盛り込まれていない。

 維新・立憲・共産・社民・こころのいずれも、幾分かの国民の声を代表する政党である。ぜひサイバー戦をどのように位置づけるのか、人材発掘・育成をどのようにするのかについて議論を喚起してほしい。

 いまだ日本のサイバー戦能力は、北朝鮮の高度な能力に劣り、米中にも伍していけない状況である。我々国民としては、こうした問題に熱心な政治家を後押しし、サイバー戦能力の向上や人材育成が「支持につながる」になることを意識的に見せていく必要があるのではなかろうか。