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安倍晋三 首相
「(森友・加計疑惑について)私もこれまで予算委員会や閉会中審査で丁寧に説明を重ねてまいりました」

日本記者クラブでの党首討論会 10月8日

「国難突破解散」をぶち上げた安倍首相。街頭でのヤジを警戒してか、会場・時間とも、事前告知は一切なしの“ステルス遊説”で全国を回っていた。演説の内容は北朝鮮問題が中心で、森友・加計学園疑惑には一切言及していない(『週刊文春』10月19日号)。「批判も受け止め国民に説明もしながら選挙を行う」と自ら語っていたはずなのに(日テレNEWS24 9月25日)、なぜやらないんだろう? 説明したくないなら、最初からそう言えばいいのにね。

解散2日後には地方行脚の最初の舞台、京都府舞鶴市へ ©志水隆/文藝春秋

 8日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会では、希望の党の小池百合子代表らから、森友学園への国有地売却や加計学園の獣医学部の新設問題について問われたが、安倍首相は「国会で丁寧に説明を重ねてきた」と一蹴、これまでの主張を繰り返すにとどまった。9月25日の国会解散についての記者会見でも「私自身も衆参の閉会中審査に出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきた」と、これまでの対応を正当化している(毎日新聞 9月26日)。

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「何か指摘があれば、そのつど真摯に説明責任を果たしていく。国民から信頼が得られるように、冷静に、一つ一つ、丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならないという決意を新たにしている」。安倍首相がこう語ったのは、6月の国会閉会にともなう記者会見でのこと(NHK NEWS WEB 6月19日)。首相が低姿勢になったのは、内閣支持率が落ち込んでいたからだ。その後、内閣支持率は26%にまで落ち込み(毎日新聞 7月23日)、7月24日、25日での閉会中審査でも国民の疑念が晴れたとは到底言えなかった。内閣支持率が上がるのは、内閣改造を行い北朝鮮問題が深刻化した8月以降。それ以降、いつの間にか首相の「説明をしていく」は「説明をした」に変わってしまった。わかりやすいといえば実にわかりやすい。

 9日夜のTBS系『NEWS23』で行われた党首討論では、今治市職員が内閣府を訪れた際の面会記録が黒塗りになっている問題について、「なぜ公開しないのか」と小池百合子希望の党代表や枝野幸男立憲民主党代表らから問われた安倍首相だが、明確な回答はしないまま「大切なことは、私が(獣医学部新設に)関与していたか(否か)に尽きる」と繰り返した。後ろ暗いことがなければ堂々と公開すればいい。

 首相は、国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長や加戸守行・前愛媛県知事ら、特区での獣医学部新設を推進する側の主張が十分に報道されていないとも指摘していたが、それなら雲隠れしたままの加計孝太郎理事長本人を国会に呼んで語ってもらえばいいんじゃないだろうか。あらゆるメディアがきっちり報道すると思う。

安倍晋三 首相
「こういう詐欺を働く人物のつくった学校でですね、妻が名誉校長を引き受けたことはやっぱり問題だった。やはりこういう人だからだまされてしまった」

毎日新聞 10月12日

 そんな折、11日夜のテレビ朝日系『報道ステーション』で行われた党首討論で、森友学園疑惑について問われた安倍首相は、籠池泰典被告について「詐欺を働く人物」と断言した。籠池被告は詐欺罪などで逮捕されたが、裁判の判決は出ていない。

 ブログで首相の発言を「首相失格の暴言」と批判した元検事の郷原信郎弁護士は、朝日新聞の取材に対して「三権分立の一角をなす行政の長が、起訴されている被告のことを、司法の場で裁かれていないのに『詐欺を働く人』と決めつけた。無罪推定の原則をおかしており、大変な人権侵害だ」と話した(朝日新聞デジタル 10月13日)。

 元東京高裁部総括判事の木谷明弁護士は「司法手続きが終わっておらず、刑事責任が固まったわけではないのに、犯人と決め付けて発言するのは問題だ。自身を正当化するために他人をおとしめたと言われても仕方がない」と首相の発言を批判している(日刊スポーツ 10月12日)。

 安倍首相は以前、「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」「私の考え方に非常に共鳴した人」と森友学園と籠池氏を絶賛していたが、同学園による国有地取得問題などの事実関係が明らかになるにつれて、学園側と距離を置くようになったのは周知のとおり(東京新聞 2月28日)。

 安倍昭恵首相夫人と籠池被告ら森友学園側との蜜月ぶりは疑いようがなく、名誉校長就任の経緯については、「籠池園長、副園長の本当に熱い熱い思いを何度も聞かせていただいて、この『瑞穂の國記念小學院』で何か私もお役に立てればいいなと思って……」と語っていた(BuzzFeedNEWS 2月24日)。詐欺師に「騙された」というのなら、被害者とされる昭恵夫人の証言をぜひとも聞かなければなるまい。安倍首相の地元で精力的に選挙活動を展開しているのだから、ぜひ証言してほしいものだ。