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小池百合子 希望の党代表・東京都知事
「負ける戦いはしないのよ。私が負けたのは〇八年の(自民党)総裁選くらいよ」

『週刊文春』10月19日号

 街頭演説では舌鋒鋭く安倍政権と自民党批判を行っている小池氏だが、10月8日に行われた日本記者クラブ主催の討論会では、「基本的には『安倍一強政治』を変えていくのが私どもの大きな旗印だ」と微妙な表現を用いていた。自民党との連立について問われた際も、「(選挙)結果としての判断ということになる」と可能性を排除しない考えを示している(時事ドットコムニュース 10月8日)。

『週刊新潮』10月19日号は希望の党関係者の声として、現在の小池氏の「セカンドシナリオ」を紹介している。思うように議席が取れなくても、希望の党は野党第一党になるだろう。そうなれば、憲法改正が悲願の安倍首相は、改憲勢力に協力してほしいと小池氏に頭を下げることになる。小池氏は安倍首相にリベンジを果たすと同時に、希望の党が改憲勢力の「3分の2」に協力する条件として、五輪問題で対立してきた森喜朗・東京五輪委員会会長の肩を持たないことを飲ませる。これで「都知事としての小池百合子」の権限を大きくしようというのだ。

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 現時点で、自民党、公明党、日本維新の会、日本のこころ、そして希望の党の議席を合わせると、憲法改正を国会で発議するのに必要な310議席を大きく上回ると見られている(日テレNEWS24 10月11日)。宿願でもある憲法改正を行いつつ、自らの権勢を伸ばすことができるのなら、小池氏にとって衆院選は「負け戦」ではなくなる。小池氏はかつてから周囲に「負ける戦いはしないのよ」と語っていた(『週刊文春』10月19日号)。

 安倍首相は公示が行われた10月10日、演説でこう語っている。「みなさん、未来を切り開くのはブーム、スローガンではありません。政策こそ未来を切り開いてまいります」。ここだけを聞くと希望の党を批判しているように聞こえるが、実は違う。安倍首相の演説はこう続く。「この選挙、相手は共産党と社民党と一緒になってわたしたちを倒そうとしています」(NHK 衆院選2017 党首演説)。希望の党は、共産党や社民党と手を結ぶそぶりさえ見せていない。安倍首相は憲法改正の同志である小池氏をそれほど敵視していない。

 小池氏は12日の演説で「安倍一強政治に『緊張感をもたらそう』ではありませんか!」と語った(スポーツ報知 10月12日)。「安倍一強政治を『終わらせよう』」と語った10日の第一声に比べると大幅な変わりようである。ウォールストリート・ジャーナルは「小池新党は自民党の派閥」(10月3日)と断じ、ロイターも「(小池氏の政策は)安倍首相の政策理念とほとんど変わらない」と報じた(10月11日)。たしかに、「緊張感」をもたらすのなら、党内の派閥で十分だ。

 朝日新聞の社説(10月9日)は、「政権交代に期待して希望の党に一票を投じたら、自民・希望の大連立政権ができた――。有権者にとって、そんな事態も起きかねない」と警告しているが、その可能性は十分にある。現時点で小池氏を舌鋒鋭く批判している安倍首相の支持者たちは、そのときどんな態度を取るのだろうか?

なお、JX通信の情勢調査によると、小池氏の支持率は37%、不支持率は54%に上る(産経ニュース 10月10日)。また、NHKの世論調査によると、安倍内閣を「支持する」と答えた人は37%、「支持しない」と答えた人は43%と、不支持率が上回った(NHK NEWS WEB 10月10日)。不支持率が高い者同士のアウフヘーベンは起こるのかもしれない。