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「一緒に売れる必要はない、友達のまんまでいいんじゃない?」光浦靖子(50)が語る同級生・大久保佳代子の存在

『50歳になりまして』より#1

2021/05/30

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, 読書, 芸能, アート

note

「仕事のパートナーにはなれませんでした」

 コンビというものは厄介です。どちらかがボケになればどちらかがツッコミになるように、二人で一つになるもので、趣味も好みもキャラクターも、体質ですら自然と住み分けるようになります。片方に唾をつけられたら片方はもう手をつけられなくなります。大久保さんは男好きで、私はお堅くて、大久保さんが下ネタを言えば、私は「ぎゃー」と耳を塞ぐ。いや、別に、コンビ揃って男好きでもいいんですよ。でも自然と同じ熱量で逆の方向へ進んでゆくんです。後輩芸人のツッコミと私が仲が良ければ、ボケは大久保さんと仲がいい。私がすぐ泣くのに、大久保さんは人前で泣かない。私は寒がりで大久保さんは暑がりで、私は汗っかきで、大久保さんは汗をかかない。私はたい焼きの皮が好きで、大久保さんは餡子が好き。お金のない若手の頃は上手に分けて食べていました。

光浦靖子さん作の大久保さんブローチ

 私たちは小学校1年生からの付き合いなので、地元は共通の友達ばかりです。盆暮れ正月、せっかく田舎に帰ったのに飲み会で顔を合わすと、正直、うんざりします。でも、「大久保さんがいるなら行かない」「光浦さんがいるなら行かない」こういうことをすると、刺激の少ない田舎暮らしに降って湧いたゴシップ、楽しいイベントの一つにされかねないので言いません。「なんだよ、いるのかよ」私と大久保さんが誰にも気づかれずに一瞬、光の速さで目と目で会話します。こういう時、コンビだなと思います。

 私たちは結局、仕事のパートナーにはなれませんでした。元々、仲良しで始めたこと。お笑い好きな大久保さんと会う口実が欲しくて、媚びるようにお笑いサークルに入らない?と誘ったのが大元のきっかけです。私が先に売れ、大久保さんが後に売れ、足並みが揃ったことがなくて、揃えようとするとなんだか互いが疎ましくなって、どちらからともなく気づいたんです。一緒に売れる必要はない、と。友達のまんまでいいんじゃない?と。たまーに、コンビでゲストに出ると楽しかったりします。

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 人と比べていいことなど一つもありません。あれだけ世間に比べられて落ち込んだのに、でも私はいつも大久保さんと自分を比べてしまいます。ここは勝ってる。ここは負けてる。こんなに真面目に生きてきた私が負けるはずがない。でも悔しいかな認めたくないけど、大久保さんは私より、人から好かれます。それは子供の頃からです。