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「一緒に売れる必要はない、友達のまんまでいいんじゃない?」光浦靖子(50)が語る同級生・大久保佳代子の存在

『50歳になりまして』より#1

2021/05/30

source : ライフスタイル出版

genre : エンタメ, 読書, 芸能, アート

note

「私にはとっつきにくい空気があるようです」

 私にはとっつきにくい空気があるようです。仲良くなった人にいつも言われます。私がもっとも嫌いなことは冤罪です。自分が間違ったことを言って非難されることは全然平気です。でも間違って伝わることは、ほんの些細なことでも許せません。身長を2センチ間違ってプロフィールに載せられたことを知り、気になって、夜中に急に目が覚めて眠れなくなってしまったこともあります。自分でもおかしいと思っています。ある人は私に言いました。「なんか否定されそうなんだよね」。それは、否定じゃないんだよ。私がしてるのは訂正なんだよ。「ほら、否定された」……頭にくる奴だなぁ。

光浦靖子さん作の座布団柴

 大久保さんは、受け入れるんですよね。それが間違いでも、なんでも一回は受け入れるんです。一度、なんでそんなに受け入れられるんだ?と聞いたら、「『違う、違う』といちいち訂正する方がパワーがいるじゃん。しかも、訂正するほどのことでもないじゃん」と言いました。

 ……そうだよね。訂正するほどのことじゃないんだよね。世の中、そんなことばかりだよね。

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「本当は〇〇なんでしょ?」

「今、〇〇って思ったでしょ?」

「違う。違うよ。あ、でもちょっとそうかも?」

「アハハハハハハ」

 そういう受け止め方でいいじゃんね。なんでか知らん。そんなことができないじゃんね。

「ちゃうわ! ちゃうわ! ちょっとそうかも?」

「そやな。そやな。なんでやねん!」

 笑いの基本のリズムじゃんね。受け入れは必ず必要じゃんね。

 先日、コンビでテレビの収録でした。空き時間、隣に座ってた男性タレントさんが大久保さんに話しかけていました。彼はとても気遣いの人で、私も大好きな人です。でも私は、彼が気を使って話しかけてくれる時の、理性と優しさの顔しか知らなかったので、こんないたずらっ子のような顔をするんだ、とちょっと驚きました。カメラが止まるたびに彼は大久保さんに話しかけますが、大久保さんから話しかけることは一切なく、いつもの低いテンションで返事をするだけです。でも彼は、とても楽しそうでした。

 私はこういう人になりたかった。OLを受け入れた時から私は完敗だったんだな。

 いや、待て、待て。これも自然と反発するコンビの呪縛じゃないのか? 大久保さんがなんでも受け入れるから、私は受け入れられない人間になってしまったんじゃないか? そう考えると、なんでもかんでも先に唾をつけた大久保さんが悪い、と結論づけられないか? 

 30周年は、大久保さんが何か提案してきたら引き受けてやってもいいです。お土産はもらって困るスノードームに決めてあります。

【続きを読む 「脳みそから気持ちの良い汁が出てきますから」光浦靖子が全ての人に“手芸”をオススメする理由】

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