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CIOの役割は、安定的なシステム運用と改革への旗振り役

――ではまさにお聞きしますが「CIOとは何ぞや」と思われますか?

横山 ……と聞かれると、なかなか答えるのが難しいと思ってしまうんですが(笑)、東証の場合、CIOには大きな役割が2つあると思っています。ひとつはシステムをいかに安定的に運用するか。不測の事態が起きた際に、最小限の収拾ができるように準備しておくというリスク管理もこれに入ります。もう一つは変革にドライブをかける、改革の旗振り役であることです。

 システム運用の監督としては、品質の高いシステム開発、その安定的運用、リスクマネジメント、ベンダーとの役割分担オペレーションなど、それぞれの担当者とその業務に目配りをして全体を把握することが役割です。先ほど「株式売買のインフラ」と申し上げましたが、株式にしろデリバティブにしろ取引や決済を行うシステムは基本的に止まらない、あるいは止まってもすぐに回復する安定的なサービスでなければならない。安定的に稼働していなければならないという意味では、これは水道や電気、通信に極めて似たものと思っています。ですので、「いかに安定を保つか」がテーマと言ってもいいかもしれません。

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昨年10月の記者会見で説明する横山CIO ©AFLO

――もう一つの役割として「変革」を挙げられました。

横山 これはDX(デジタルトランスフォーメーション)の旗振り役という意味以上に、来るべき大変革に対応するため我々は何を武器にできるか、何を用意すべきかを考えなければならないということです。

 日本取引所グループは何かに守られた安定的な組織ではありません。例えば、米国にしろ、EUにしろ多くの取引所が乱立しているように、日本にも取引所間の競争が進展する動きが起きても全くおかしくはないわけです。もっと言えば、私設取引システム(PTS)の存在であったり、あるいは上場会社がどの取引所を選ぶか、投資家がどこの市場で取引するか――そういった様々な観点で考えるともはや我々の組織はグローバルベースの競争に参入しているようなもの。ですから、仮想通貨やデジタル資産がどんなテクノロジーを挟んで取引されているか、ブロックチェーンやAI技術がどう使われているのかなどはきちんと研究しておいて、競争相手がどんどん新しいサービスを繰り広げてきても、自前の安定的なシステムの中で応用を効かせて対応できるようにしようと準備をしているんです。

 

――安定を保つことと、変革にドライブをかけること。守りつつ攻めるというか。

横山 鈴木CIOからはシステムに関するベーシックなところを学んだのですが、野村証券出身で産業再生機構から東証社長に招聘された斉藤惇社長の秘書を2年やっていたことがあるんです。斉藤さんは徹底した顧客志向の考えをお持ちで、そこから学んだことも大きいと思っています。CIOの役割には両輪あると考えているのは、こうした私の経験が反映しているのかもしれませんね。