「いったい、あのCIO(最高情報責任者)は何者だ」

 ネット上がざわついたのは、昨年10月のこと。東京証券取引所のシステム障害についての記者会見が話題となっていた。

 情報漏洩や大規模なシステム障害が起きた場合、記者が矢継ぎ早に浴びせる質問に経営陣がしどろもどろの説明を繰りかえすのがお決まりのパターン。ところが、この日は障害発生からわずか半日後の記者会見だったにもかかわらず、事態を把握した上での的確な受け答えが印象的だった。

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「技術がわかる経営者」の必要性が叫ばれて久しいが、どのようなキャリアを歩めば、このようなビジネスパーソンになることができるのか。東京証券取引所などを運営する日本取引所グループでCIOを務める横山隆介常務執行役に聞いた。

日本取引所グループでCIOを務める横山隆介常務執行役

会見で一躍注目を浴びた、あのCIOは86年入社のプロパー組

――昨年10月に起きた、東証のシステム障害。全銘柄の株式が終日売買停止になったわけですが、その日の記者会見は、何かと手厳しいSNSでとても好評でした。特に横山さんの受け答えが分かりやすかったということなんです。

横山 システム障害については当然ながらご批判を受けましたし、様々な反応をいただいたようですが、私の説明について何か反響のようなものがあるとは考えてもおりませんでした。

――最高情報責任者(CIO)というお立場で、売買システム「アローヘッド」不具合の原因、影響、復旧方法を技術的な観点から主にご説明されたわけですが、ご自身はエンジニア出身ではないんですよね。

横山 はい、エンジニアでもありませんし、外部のシステム部門から中途入社したわけでもありません。1986年に東京証券取引所に入社した、いわゆるプロパー社員でして、勤続35年となりました。そのうち15年は業務部門と言っているんですが、株式売買のルールを作ったりする仕事をしていました。後の20年は何らかの形でITシステムに携わる部署にいて、直近の10年はシステムに関わる責任を持つ立場にいます。CIOに就いたのは2017年のことです。