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プロパーの強みは「内側の論理」を理解していること。その上で守りと攻めを担う

――そんな紙と鉛筆の環境の中で、ITシステムとの最初の接点というと、どのお仕事になるんでしょうか。

横山 3年目の異動でシステム総務部というところに配属になりました。ここで証券コードの分類をして付番したり、管理する仕事をしました。直接システム開発に関わるものではないんですが、コードはシステムの中でも基本中の基本の部分ですから、それがシステムとの付き合いの始まりでしょうか。とはいえ、ここも机の上で紙に鉛筆を走らせる仕事でした。有価証券報告書の中の事業別売上高を見ながら、各企業の業種分類を見直すみたいな。当時、鉄道会社は不動産の売上高が多くて、鉄道会社をみんな不動産会社に分類替えしようと案を出したら「さすがにそれはやめてくれ」と鉄道会社からクレームが来たことを覚えています(笑)。その後はまた業務部門で、株式市場の公平性を担保するための規則を考えたりと、慎重な判断を重ねる場所に身を置いていました。現在のように、常に新しい動向をどうシステムに反映させるかと、変えることに重心を置く仕事とは違った部署でした。

 

――プロパー社員からのCIOは初めてと聞いています。

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横山 06年にCIOのポストが新設されて、NTTデータから鈴木義伯(よしのり)さんが招聘されました。その次が東京海上日動からいらした澁谷裕似(ひろゆき)さん。その次が私ですので、プロパー社員としては初めてとなります。ただ、弊社のことに限らず思いますが、これからはもっとプロパーのCIOが誕生すべきではと思っています。プロパーの強みは「内側の論理」と言いますか、その組織のこれまでを十分に理解していること。それを活かしてITに関する守りと攻めを担うことが理想的ではないでしょうか。私自身、ITシステム部門の前に業務部門を経験できたことは、現在の職責に大きく活かされていると思っています。

――特に新しいことを実現するには各部門、各部署の調整や理解を得る場面が多いのだと思います。

横山 そうですね。海外の方とお話ししていると「えっ、35年も同じ会社にいるの?」っていつも驚かれるんです。でも、このCIOという役割は、プロパーであること、その強みを生かせる仕事のようにも感じています。

写真=末永裕樹/文藝春秋