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東証システム障害で話題に 横山隆介CIOが語る「ベンダー任せにしない」理由

日本取引所グループ・横山隆介CIOインタビュー #1

note

技術者の言葉を、納得するまで自分の言葉に翻訳してみる

――「システムについて横文字を使わないで説明してもらえませんか」という質問が記者会見で出ていましたよね。

横山 けっこう大変な質問だったので覚えています。確かに、システム部門やベンダーさんから説明を受けるときにポンポンポンと、横文字を3つ並べられて説明終了という場面はあるんですね。そんなときはまさに、自分の中で横文字を使わないでどう変換できるか考えてみるんですが、それができなかったら聞き直します。ストーリーにして理解するのと同じ作法ですが、自分の言葉で再構築すると、結果として腹落ちしますよね。理解しにくいものは、そのままにしないようにしています。

――技術者の言葉を、それがわからない人へつなぐ翻訳者の役割も自然と担う仕事に思います。

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横山 人に伝えるための翻訳である前に、自分の言葉への翻訳なんでしょうかね。納得していないものに対して責任を取るというのは、気持ち的にとてもしんどい。ですから、納得するまで翻訳してみる、その努力は必要だと思っています。

手サインと紙と鉛筆で株式を売買。アナログな時代だった

――非常にシステムに精通して理路整然と把握されていることが話題になりましたから、てっきり入社してからシステム畑一筋と思っていたのですが、違うそうですね。

横山 就職するときの東証のイメージに「システム」という言葉はありませんでしたからね。どちらかというと、公的な機関というか、アナログな公務員的世界を思っていました。新人当初は株式部に所属していて、立会場に通っていました。もう立会場と言っても写真や「懐かしの映像」でしか見られない光景ですよね。ピーク時は証券会社の方々合わせて2000人くらいがワーッと集まって、手サインで売り買いをやり取りしていたわけです。

日本橋兜町にある東京証券取引所

――手サインでワコールを示すときは両手でパンツの形を作るんでしたっけ。

横山 よく知られているのは、三菱商事は「3」本指で「障子」を開けるジェスチャーをするとか。私が立会場にいた頃には、相場情報がシステムを使って各証券会社に配信されてはいたんですが、それでも基本的には紙と鉛筆を使い、人力で株式の売買をやっている時代でしたね。アナログです。