動画メディア「文藝春秋PLUS」では、弁護士の小澤亜季子さんをゲストに迎え、「退職代行の真実」をテーマに語っていただきました。退職代行サービスの実態、利用者の特徴、法的な観点からの注意点など、多岐にわたる内容が語られました。「文春オンライン」では、その中から一部を抜粋して紹介します。
弟のスマホに残った「仕事辞めたい」検索履歴
――弁護士として退職代行のサービスを始められた経緯を教えてください。
小澤: 2018年の夏頃、インターネットのニュースで退職代行というサービスを初めて知りました。
「解雇」は法律的に難しいが、「退職」は法律的にさほど難しいことではありません。法律的には退職はさほど難しいことではないのに、安くはないお金を払って業者に代行していただくというニーズに驚きました。
新卒で会社に入り、半年後に突然死した弟のスマホの検索履歴に、「仕事辞めたい」「仕事辞め方」といった言葉がたくさん残っていたことを思い出し、辞めたくて眠れないほど悩んでいる人がいるのだと理解しました。そこで、弁護士がこのサービスを提供した方がいいのではないかと思い、始めました。
――これまでどのくらいのご相談件数がありましたか。
小澤:件数については、正確には数えていませんが、ご相談ベースで言えば400件は受けていると思います。
こんな人は注意が必要
――弁護士に退職代行を依頼したいという方はどういう方が多いですか。
小澤:私が相談を受けた人に限って言えば、性別で言うと、男性の方が多く、約7割を占めています。雇用形態では正社員の方が多いです。年齢層は、20代以下が1/3、30代が1/3、40代以上が1/3くらいの割合です。
――どういうパーソナリティの方が多いですか。
小澤:すごく真面目な方が多いです。適当に手が抜けなかったり、責任感が強すぎるので、「辞める」ということを言い出せなかったりする方が多いです。
――なぜ退職代行を利用するのでしょうか。
小澤:一番分かりやすいのは退職妨害です。例えば、「辞める」と言ったら暴言を吐かれる、暴力を振るわれる、退職届を上に上げてくれない、などさまざまな理由があります。また、ハラスメントや長時間労働の問題もあります。
――法律的な問題は?
小澤:法律的には、正社員の場合、退職届を会社に出して2週間経てばやめられます。会社が嫌だと言っても、勤務規則に3ヶ月前までに申し出なさいと書いてあっても、関係ありません。