鶴丸食品をトップに頂く、「食」にまつわる企業群としては国内でも大手の鶴丸グループ。その子会社である食品原料の専門商社TSフードサービスに入社して3年目の高宮麻綾(まあや)は、グループ内での新規事業を提案するビジネスコンテストに絶対の自信を持ってエントリーした。

©beauty_box/イメージマート

 彼女のプランは食品ロスを出さない循環型社会。TSフーズが少額出資しているデメテル株式会社が開発中の食品酵素を使うことで食品の寿命を伸ばすというプレゼンで、麻綾は予想通り優勝を手にした。これで親会社に出向し、やりたい仕事ができる!

 と、喜んだのも束の間、親会社から提案した事業を白紙に戻すと告げられた。かつて親会社が出資していた食品酵素会社・カンコーが事故を起こし、死者が出た。カンコーとデメテルはよく似た製造ラインナップであり、会社としてはリスクを避けたいというのだ。

ADVERTISEMENT

 さあ、麻綾はブチ切れた。聞いたこともない昔の会社のわけの分からないリスクなんかに自分のアイデアを潰されてたまるもんか。そんなとき、倉庫の古い段ボール箱からカンコーの一件は事故ではなく殺人だという謎の告発文書が出てきて……。

©AFLO

 これは面白い! まずこの高宮麻綾というヒロインが抜群に魅力的だ。まず仕事ができてやる気もある、というのは大前提。その上で自分のやりたいことのためなら猪突猛進、手段を問わない。上司にも刃向かうし、会社の情報を知り合いの記者にリークしたりもするのだ。めちゃくちゃ威勢が良いのである。

 その代わりやりたくないことはやらないし、感情が先に立って失敗したり、考えが甘くて利用されたりもするが、それでもへこたれないのが良い。こういう社員がいたら会社が楽しくなりそうだ。それ以上に面倒も多そうだけど。