記者会見での当意即妙なやりとりが話題を呼んだ日本取引所グループ(JPX)の横山隆介CIO(最高情報責任者)。
インタビューの後編では、企業組織におけるCIOに求められる役割、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)時代に求められる「デジタル人材」のあり方について聞いた。
大規模システム障害で気がついた「取引所はITシステムが基盤」
――意外にもシステム畑一筋ではない、というお話をうかがいましたが、現在のCIO(最高情報責任者)の仕事内容に直結した経験となりますと、どんなことでしたか。
横山 東証で2005年から2006年にかけて起きた、全銘柄売買停止、ジェイコム事件、ライブドアショックと続く大規模システム障害です。私は当時IT企画部の課長でして、情報セキュリティやBCP(緊急事態における事業継続計画)を担っていました。その時に痛感したのは、取引所の仕事というのはいわゆる装置産業であって、それは他でもなくITシステムが基盤であり重要なのである、ということなんです。
今でこそ取引所は株式売買のいわばインフラなのだから「システムありき」だというのは疑いのないことなんですが、東証という会社自体も、この時まではシステム部門へ大きなリソースをかけていなかった。また、取引の場として利用いただく証券会社の皆さんの環境が急速に変わり始めていること、システムを最大限活用していることに追いついていなかった。そのことにようやく気付いたんですね。
これを大きな反省点に、システム全体を把握する責任者としてのCIOを置くことになり、NTTデータ出身の鈴木義伯(よしのり)さん――現在は日本郵便のCIOをされていますが――を外部招聘したんです。もちろん私は当時、この立場になることは想定していませんが、鈴木CIOの直下で一緒に仕事をさせてもらったことで「CIOとは何ぞや」について学ぶことができました。