トラブルが起きることを前提に、危機への適応力を持つ
――最近ではみずほ銀行のATM障害が大きなニュースになりましたが、業種を問わず大規模システム障害は起こり続けます。エンドユーザーからすればシステムがなければサービスの快適さ、利便性は享受できない一方、システムがある限りトラブルに巻き込まれる可能性もある。こうした利便性と安全性をどんなバランスで両立させるか、お考えがあったりしますか?
横山 すごく難しい質問ですね……これにきちんと答えられたらスーパーCIOなんだろうと思うんですけど、私が今思い浮かべているのは「レジリエンス」という言葉です。危機的な状況、困難な状況に対する適応力を指す言葉です。
弊社における昨年10月の大規模システム障害では、掲げていた「Never Stop」という言葉に対して「絶対に止まらないシステムという仮定をしていたからこそ、回復力という点で欠陥が出てしまったのではないか」とご批判も浴びました。確かに、システムというものは何かしらトラブルを起こす可能性がある。そう考え直し、「止まるかもしれない」という前提に立って、そうなった場合「いかに早く復旧させるか」に重きを置いてシステム全体を見直すことにしたんです。これはまさに危機を前提として、可能な限り危機に適応できる力を持つシステムを作ろうという設計思想です。ここで大切になってくるのが、システムの中のいろんな機能を接続させすぎない、ということです。全部を結びつけてしまった場合、どこかで障害が起きると全てに影響が起きてしまう。サービス全体が停止してしまいますよね。
――鉄道の各線が相互乗り入れし過ぎると、ある駅で起きた遅延が交通網全体に影響してしまうような。
横山 ええ、そうした密な結合を避けて、障害が最小限の範囲で済むような「疎結合」のシステム構築を前提にしています。そうすることで、サービスの利便性を改善していくこともできるし、一方で安全性を追求することもできるのではないかと考えています。
――先ほど「ベンダー任せにしない」という方針で、要件定義から社員も関わってシステム構築するとお伺いしました。となると、システム系を担う人材採用にも力を入れていると想像するのですが、どんな方針をお持ちなんでしょうか。
横山 システムの安定運用のためには、関連会社や元ベンダーの方、金融機関や証券会社のシステム部門にいた方の中途採用を随時行って入っていただいています。他方で、採用に力を入れなければならないのがDXに関わる人材です。これは他社のCIOの方々ともよく話題になるんですが、結局「デジタル人材」ってどんな人材なのか、と。