売り上げ達成のプレッシャーが強いとされる、不動産営業。中には追い詰められ、組織的な不正に手を染めてしまう企業もあるようで――。『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(日本経済新聞「揺れた天秤」取材班著、日経BP)から一部抜粋し、お届けする(全3回の3回目/初回を読む前回を読む)。

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売り上げのプレッシャーから、不動産営業たちは不正に手を染めた(画像はイメージです)©mapo/イメージマート

 仕事で渡した自分の名刺が知らないところで悪用されているとは誰も思わないだろう。ある企業がクラウド上に保有していた膨大な名刺データが不正に閲覧され、投資用マンションの営業リストに転用されていた。実行役として摘発されたのは不動産会社の営業マンたち。彼らを犯行に駆り立てたのは売り上げ達成への強いプレッシャーだった。

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 東京都内のある不動産会社の営業部に所属する社員たちは日夜、営業電話をかける先のリスト作りに追われていた。会社が力を入れていたのは、老後の資産形成の選択肢として需要が広がっていた投資用マンション。成約率を上げるため、1件でも多くの連絡先が必要だった。