「女のお前が男のオレにできることは一つしかないだろう。オレの奴隷になれ」

 3月13日、元記者の探偵会社社長が依頼主の女性医師から不倫問題の相談を受け、その情報を悪用して性行為を強要したり、現金3000万円を奪った事件で、強制性交等罪や恐喝罪に問われた長坂健太被告(59)に対し、岐阜地裁は懲役7年を言い渡した。

2022年3月13日、強制性交等事件の舞台になったとされるラブホテル〈愛知県豊橋市〉

「警察にかかれば、すぐ犯人が分かる。どう責任を取ってくれるんだ!」

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 事件の発端は、A子さん(40代)が不倫相手の男性医師B氏との関係に悩み、長坂被告の探偵会社に相談したことだった。A子さんはB氏の車にGPSを取り付けて行動を監視していたが、その事実がB氏に発覚。警察沙汰になる可能性を恐れたA子さんは、長坂被告に相談した。

 しかし、長坂被告の態度は一変。「警察にかかれば、すぐ犯人が分かる。探偵会社にも自動的に捜査が入る。どう責任を取ってくれるんだ!」と怒鳴りつけられたという。さらに、「女医がストーカーなんてマスコミが飛びつく事件だ。マスコミにかかれば、Bさんの家族も簡単に特定される」と脅し、「自分にはマスコミにツテがあるから根回し可能」と持ちかけてきた。

 長坂被告はA子さんを豊橋市内のラブホテルに連れ込み、「奴隷なんだから、土下座して、足の指先からペロペロ舐めていくんだ」と命じ、性行為を強要。その様子を動画で撮影し、「裏切ったときの担保」として保管した。

「お前が自主的にやったんだからな。これからも続いていくからな。無期限だ。一生奴隷でいろ」

車の中で脅迫行為をしたとされる現場のコインパーキング(愛知県豊橋市)

 長坂被告はその後も、A子さんに対して「週2回は電話で報告すること」「月2回は会ってセックスすること」を強要。さらに、「奴隷として貢ぐ全財産の3000万円を受け取るのは、警察の捜査のほとぼりが冷めてからにする。知り合いの政治家にかけ合って岐阜県警の捜査を止めてもらうように工作する」などと持ちかけ、最終的に3000万円を受け取った。

 一方、長坂被告は容疑を否認。「3000万円はA子さんが警察に捕まらないように協力するための費用だった」「A子さんが『肉体関係を持つから味方になってほしい』と言うのも一理あると思った」と主張している。

 かつて記者時代の元同僚だったジャーナリストは、長坂被告について「物静かだし、忘年会のときもつるんだりせず、自分の世界に入っている。政治家や警察にツテがあったとも思えない」と証言している。

 岐阜地裁の戸﨑涼子裁判長は「交際相手との結婚をどうサポートするのかというのも不明だし、探偵業とその客に過ぎない被害者が性交することになったというのも不自然」と指摘した上で、

「交際相手へのストーカー行為がマスコミの記事になれば、被害者のみならず多くの関係者に影響が及ぶなどと言って恐怖感を与え、被告人と組まなければマスコミに記事を書かせるなどと言って脅し、性交及び口腔性交、3000万円の交付を受けた。

 被告人の行為は暴力を伴うものではないが、被害者の弱みを握って、被告人に助けを求めざるを得ないような状況に追い込み、しかもそれを被害者が望んで選択したかのような体裁を取らせる悪質なものである。被害者の屈辱感、恐怖感は相当なもので、人間としての尊敬を踏みにじられた結果は重大。3000万円は恐喝事案の中でも相当高額であるが、被告人は不合理な弁解に終始し、反省もない」

 と断罪した。

 探偵が依頼人の弱みにつけ込み、金銭と性的関係を要求するという前代未聞の事件。元記者の経歴を持つ被告人の手口の巧妙さと、被害者の苦悩が浮き彫りになった事件だった。

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