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【日本ハム】ライバル球団の視点で考えた「則本昂大はなぜ攻略されたか?」

文春野球コラム ペナントレース2017

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「知り抜いた相手」と戦うCSの面白さ

 CSファーストステージは両リーグともに1勝1敗で第3戦にもつれ込む展開となった。パ・リーグ党の筆者はもちろん西武と楽天の「赤い決戦」を楽しんでいる。西武が圧倒的な勝率を残した「炎獅子ユニホーム」(楽天戦は着用の8戦全勝!)を選んだため、前代未聞の同色系対決が実現してしまった。グラウンド上はパッと見、敵味方の判断がしづらい。ファンにもわかりにくいし、もし選手が見間違てミスするようなことがあったらせっかくのビッグゲームが台無しだ。これはシーズン中、そうであったように楽天がホーム用の白いユニホームを着る等のハンドリングができなかったかなぁと思う。

 本稿の締切タイミングは10月16日午後イチ、第3戦プレーボールの5時間前だ。ここまで2戦は密度が濃くて、本当に見応えがあった。秋の長雨と重なってグラウンド整備に苦労しているセに比べ、ドーム球場の多いパは過密日程には強い。これは選手にしてみたらやりやすさがかなり違うと思う。最初に旗幟(きし)鮮明にしておきたいが、筆者はファイターズファンである。西武も楽天も本当になじみ深い相手だ。今季はこてんぱんにやられたなぁ。つまり、本稿は「ライバル球団の視点」でCSを読み解く主旨になる。

文化放送はインターネット中継のみだった ©えのきどいちろう

 ポストシーズンの密度の濃さに関して、異を唱える野球ファンはたぶんおられないのじゃないか。長丁場のレギュラーシーズンは持久戦だ。これはあんまり春から総力戦をやっていても息切れする。スランプに陥る選手や故障者が出たりしてもガマンである。やりくりしながらペースを保つ。今季はソフトバンクが見事にこれをやり切った。西武や楽天の勢いが勝った時期もあるけれど、ソフトバンクはペースを崩さなかった。

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 が、短期決戦のポストシーズンはガマンしてたら終わってしまう。指揮官の見切りや見極めがカギを握る。濃密なのだ。1試合に3試合分くらいの要素が入る。重圧もものすごくて、見ているほうもクタクタだ。

 で、日本シリーズとCSの違いなのだが、もちろん華があるのは日本シリーズだ。全7試合あるから起伏に富んだドラマが展開される。日本一を決めるにふさわしい舞台だ。それはもう当たり前の話。

 ただ「他流試合」の日本シリーズと比べて、知り抜いた相手と戦うCSはまた別のコクがあるのだ。データを集め、クセを研究し、場合によってはシーズン中にエサを撒いておく。僕は毎年、あぁ、この打者にはこういう攻め方があったのかとか、この投手はこういう風に攻略可能なのかとか、うなってばかりいる。あるいはなぜこのエースがこうも簡単に攻略されたのか、すぐにはわからないながら録画を見ながら考えてみる。それをノートに取っておいて、後日、取材のときにぶつけてみたり。

 CSは「知り抜いた相手」の知らなかった部分、見落としてた部分を発見する機会なのだ。ビッグゲームはそうした隠された部分にスポットを当てる。両球団のスコアラーにとっては腕の見せどころだろう。「知り抜いた相手」に新解釈を施すのだ。と、ここまでの前フリで賢明な読者は既にお気づきじゃないか。僕はCSファーストステージ最大のミステリーは「則本昂大はなぜ攻略されたか?」だと考えている。

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