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「大丈夫、ちゃんと作家になったよ」
日記の中で、とりわけ印象的だったのは、繰り返し綴られている将来への希望と不安だ。
作家になりたい、しかし本当になれるだろうか。上の学校に行けない状況で、どうやってその夢に向かって勉強すればよいのだろう……。10代ならではの、心ばかりが急(せ)くような悩みもそのまま日記には記されていて、私は18歳の伯母の肩を抱いて、「大丈夫、おばちゃん。ちゃんと作家になったよ」と、励ましに行きたいような気持ちになった。
この日記を多くの方に読んでいただくことで、作家としての伯母を理解していただくと同時に、戦争の記憶が具体性を失い、忘却のかなたへと失われつつある流れをわずかでも堰きとめることができればと祈っている。
私たち遺族のこうした意を汲んで、快く掲載をお引き受けくださった文藝春秋に、心より感謝申し上げます。
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田辺美奈さんの手記「没後2年 押し入れから出てきた1冊のノート」は、「文藝春秋」7月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
