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デジタル大臣による「アナログ」な脅し方

 この「ワニ動画」は怖かった。平井先生はデジタル大臣だが脅しの内容はアナログだった。

 直接NECを脅しているのではなく、脅すよう会合で指示していた。つまり自分の手は汚さない。そして激高していないしキレてもいない。冷静にねっとりと話している。これはゾクッとする。ワニがすーっと水辺の獲物に近づく様子に似ている。NECのおじさんたち逃げてー!

 平井大臣はこの音声の話し相手は「10年来仕事をしてきた仲間なので非常にラフな表現になった」と釈明している。だが「仲間」からこの音声がリークされることに深刻さを感じる。パワハラ体質が日常であり、もういい加減にしてくれ、助けてくれという悲痛な思いが「仲間」にあったのではないか? だからこそのリークではなかったか。

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大臣の弟が社長の「四国新聞」はこの件をどう報じた?

 さて、今回の私のコラムはここからが本番である。新聞読み比べ好きとしてはどうしてもチェックしておきたいことがあった。それは平井先生の地元である香川県の「四国新聞」はこの件をどう報じたか? である。野次馬精神がとまりません。

四国新聞社 同社公式Facebookより

 平井卓也先生にとって四国新聞はただの地元紙ではない。弟が四国新聞の社長を務めていて社主は母親。つまり平井一族のオーナー経営。

 ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(大島新監督・2020年)では、2017年の総選挙の様子も描かれているが、このなかで印象深かったのは四国新聞の報道だった。

 平井卓也の対立候補である小川淳也には厳しいが、平井には「地域貢献に汗流す」という見出しで思わず笑ってしまうほどのわかりやすさだった。

 では今回の脅し音声について弟が社長を務める新聞はどう伝えたのか。私は我慢できなくて四国新聞の東京支社に出かけて購入した。

 6月12日(土)にその記事はあった。2面の下。

『「税金の無駄なくすための発言」 73億→38億に 五輪アプリ経費削減巡り』

平井発言について報じた四国新聞の実際の見出し

 不適切な発言があったと書くが、「国民の血税を預かる立場。無駄をなくしていく強い気持ちを持っている」というお兄ちゃん、いや、平井先生の言葉を見出しに持ってきていた!