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ロッテ・レアードが語った、ヤンキース時代の失敗談と忘れられないジーターの優しさ

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/06

「家族が来ているんだろ?」今でも覚えているジーターの優しさ

 ただ一番忘れられない思い出となるとデビュー戦の翌日に行われた試合。デーゲームだった。この日は家族10人ほどをカリフォルニアから招待。そのことを知ったジーターが普段は自分の招待者に観戦してもらうために使用しているVIPルームを「家族が来ているんだろ? 今日、オレは使わないから使っていいよ」と申し出てくれた。スーパースターの優しさが身に染みた。

「わざわざそのエリアのスタッフにも、今日は彼の家族が使うからよろしくねと言ってくれた。そして部屋の飲み物や食べ物もすべて無料だった。その試合、自分がヒットを打ったかどうかはハッキリと覚えていないけど、その優しさだけは今でも鮮明に覚えている。本当に嬉しかった」

 レアードは10年前の思い出を嬉しそうに懐かしそうに話をしてくれた。あれから月日は流れた。メジャーでは53試合に出場し25安打、16打点、6本塁打に終わったが2015年に来日すると16年に本塁打王、日本シリーズMVPに輝くなど野球ファンなら誰もが知る存在となった。そして今年もオールスターには指名打者としてファン投票で選ばれた。ホームランを打った際にベンチ前で行うスシのパフォーマンスはお馴染みだ。

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 来日後、生きているのは準備の大切さ。球場に早めに来て、身体を整え、試合に向けてデータを見て練習に備える。それはヤンキース時代に身をもって覚えたことで来日後、日本野球にいち早く順応するうえでも役に立った。そして人を想う心。若い選手が悩んでいると冗談を言って、声をかける。困っている選手へのアドバイスも率先して行っている。時には「美味しいからみんな食べて」と果物の差し入れを食堂に持ってくる。ジーターに優しく接してもらった体験が今も忘れられないレアードは、今、手を差し伸べる立場として様々な事に気を配り、行動をしている。

 シーズンはまもなく前半戦を終える。1974年以来のリーグ1位でのリーグ優勝を目指す千葉ロッテマリーンズにとってレアードの存在は頼もしい限り。ヤンキースの魂が息づく男がマリーンズを頂点へと導く。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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