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ロッテ・レアードが語った、ヤンキース時代の失敗談と忘れられないジーターの優しさ

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/06

 若い頃の失敗談や優しくしてもらった思い出は忘れられないものだ。今やすっかりスシボーイとして日本で人気者になったブランドン・レアード内野手にとっての忘れられない懐かしい想い出はメジャーデビューをした2011年の事になる。

レアード ©千葉ロッテマリーンズ

メジャー昇格初日に「やってしまった」思い出

「あれはメジャーデビューした初日だね。遅刻ではないのだけど、チームで一番遅く球場入りをしてしまったんだよ」

 懐かしそうにレアードが振り返ってくれた。ニューヨーク・ヤンキースの一員として7月のタンパベイ遠征でメジャー昇格を果たした。宿泊ホテルから球場行きのバスは3便に分かれており、レアードは一番遅いバスに乗り込んだ。乗った瞬間に異変に気が付いた。中にいたのはストッパーのマリアノ・リベラ投手ただ一人。車内はガランと静まり返っていた。球場入りしてロッカーに行くとすでにもう全員がそろっていた。デレク・ジーター内野手、アレックス・ロドリゲス内野手というそうそうたるメンバーはすでに準備を整え、いつでもグラウンドに出られる状態。合流したばかりの新入りだけが私服で立ちすくんだ。

「やってしまったことはすぐにわかったよ。もうみんないるから挨拶しようにも誰から挨拶していいかもわからない。混乱したよ」

 オドオドしていた若者はすぐにマネージャー室に呼ばれた。これには諸先輩も面白がり、みんな後からついてきた。

「もちろんマネージャーからは『もっと早い時間に球場入りして準備をしないとダメだよ』と小言を言われたよ。それをみんな楽しそうにクスクスと笑いながら見守っていた。そういう雰囲気になってくれたから逆に助かったけどね」とレアードは笑う。

 ヤンキースではナイトゲームでも昼過ぎには球場に入り、身体を動かすなど試合の準備をしていた。メジャー昇格初日に準備をする大切さを痛いほど痛感した。そして2日目はバスに乗らず、タクシーで誰よりも早く球場入りし一人、ロッカーで先輩たちが球場入りをするのを待った。

 そんなレアードのデビュー戦は本拠地ヤンキースタジアムに戻ってのアスレチックス戦だった。ヤンキースが大差でリードする試合展開。点差が開いた場面、ベンチで声を出しているとジーターがニヤリと笑って、レアードに目を向けた。最初はその意味が分からなかったがすぐに理解した。ジーターに代わっての代打を告げられたのだ。スーパースターの代打。今でも忘れられないデビューだ。その打席は四球だったがその後、クレイグ・ブレスロウ投手から中前適時打。これがプロ初ヒット、初打点となった。