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巨人・元木大介が参謀に適任な理由と、ソフトバンクに及ばない“決定的な弱点”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/13

 スコアラーの視点から原辰徳監督のチームづくりを分析すると、「選手の役割分担を明確にしたい」という特徴が見えてきます。

 打線の組み方はとくに顕著です。走力のある選手、長打力のある選手、出塁率の高いチャンスメーカー、チャンスに強いポイントゲッター……と、選手の個性に応じた役割を求めるのです。

 しかし、2021年は今のところ原監督の構想通りの野球はできていないのでしょう。エリック・テームズはデビュー戦でアキレス腱断裂の重傷を負い、ジャスティン・スモークは退団して帰国。坂本勇人は故障離脱した時期があり、吉川尚輝は今もリハビリ中。梶谷隆幸は7月10日に右手甲を骨折して再び離脱。丸佳浩は不調でファーム落ちも経験しました。素晴らしい人材はいても、なかなかメンバーが揃って戦えないもどかしいシーズンになっています。

 それでも、首位・阪神と僅差の2位と踏みとどまっていられるのも、原監督の卓越したチームマネジメントにあると感じます。私はとくに、原監督が全幅の信頼を置いている元木大介ヘッドコーチの尽力が大きいのではないかと見ています。

元木大介ヘッドコーチと原辰徳監督

普通の人間が見ていない部分を見られる男

 現役引退後にタレント業で活躍していたイメージの強い元木ですが、私は彼ほどヘッドコーチにうってつけの人材はいないと考えます。実は私が巨人フロントに在籍した高橋由伸監督時代(2016~2018年)にも、「元木コーチは面白いと思います」と進言したことがありました。残念ながらその時点では実現しませんでしたが、こうしてヘッドコーチとして活躍する姿を見ると、やはり適任だったなと思います。

 なぜ、元木が参謀に向いているかと言えば、普通の人間が見ていない部分を見られる男だからです。試合中でも練習中でも常にアンテナを張り巡らせ、選手だろうとコーチだろうとズケズケと物を言える。実は、選手に嫌われることを恐れずに指摘できるコーチは少ないものです。巨人では近藤昭仁さん以来の、貴重な存在ではないでしょうか。

 思えば現役時代から、元木は特殊な男でした。長嶋茂雄監督から「クセ者」と呼ばれていましたが、相手投手のクセを見抜くのが大の得意。試合中によく「三井さん、こんなクセも見つけたよ」と教えにくることもありました。

 データへの意識も高く、相手バッテリーとの読み合いが好きな選手でした。甲子園球場での阪神戦の試合中、元木が私に話しかけてきました。

「三井さん、ネクストバッターズサークルに入ったら、真っすぐか変化球かどちらを狙えばいいか教えて」

 私はさまざまなデータを駆使して、ベンチから元木にサインを送りました。1打席目はストレート狙い。元木はそのストレートを打ってヒットを放ちます。2打席目も同様にストレート狙いとサインを送り、それも的中してヒット。3打席目も私は「ストレート狙い」とサインを送りました。

 ところが、元木は「俺は変化球だと思う」とサインを送り返してきました。私は、キャッチャーの矢野(輝弘/現・燿大)の性格からしてまたストレートだという読みがあったので、再び「ストレート狙い」のサインです。

 結果は元木がまたストレートを狙い打って、その日3本目となるヒットをセンター前へと運び、こちらに向かってニヤッと笑いました。

 腹心として原監督を支える今の元木を見ていると、やはりあるべき場所に落ち着いたなと実感します。これからも巨人になくてはならない、名参謀になるのではないでしょうか。