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巨人・元木大介が参謀に適任な理由と、ソフトバンクに及ばない“決定的な弱点”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/13
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ソフトバンクに及ばない決定的な弱点

 現在の巨人のコーチングスタッフを見て、カギになるのは捕手を育てるバッテリーコーチではないかと私は見ています。スコアラーの目線で見ると、巨人の長年の課題は捕手の育成にあるからです。

 一昨年、昨年の日本シリーズではソフトバンクに4連敗と惨敗しました。私は同シリーズを見ていて、ソフトバンクの甲斐拓也と巨人の捕手陣に大きな差があると感じました。

 巨人の捕手陣は、投手陣と強い信頼関係を結べていないように見えたのです。ソフトバンクの投手陣は力量が高いのはもちろんながら、甲斐の配球の意図を理解した上で投げ切っています。甲斐への絶対の信頼があるから、しっかりと腕が振れてコントロールミスも少ない。巨人の投手陣には、捕手に対してそこまでの信頼感がありません。なぜここでボール球を投げるのか、なぜこの球種でカウントを取るのか、捕手の意図が明確に伝わっていないのでしょう。

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 本塁打というのは基本的に防げるもので、打たれたらバッテリー間のミスだと私は考えています。巨人は今季5月30日の交流戦で勝利して、日本シリーズ、交流戦、オープン戦で続いていたソフトバンク戦の連敗を14で止めました。それでも、その前日までの2戦でソフトバンク打線に9本ものホームランを許しました。これは明らかに多過ぎで、捕手が支配力を発揮できていない証拠でしょう。

 1990年代には斎藤雅樹、槙原寛己、桑田真澄という強力な三本柱がいました。彼らは能力が高いので、無難にアウトコース一辺倒の配球でもある程度は抑えられました。でも、それでは三本柱の力が衰えたら行き詰まってしまいます。

 かといって、インコースを突けばいいという単純な話でもありません。1989年に、中日から中尾孝義という捕手がトレードで移籍してきました。中尾はインコースをよく使う捕手で、その配球に他球団が面食らって巨人は2年連続で優勝を果たしました。ところが、1991年は一転して4位まで落ちてしまいます。前年まで好調だった投手陣が、軒並み調子を落としたからでした。

 不振の要因は、他球団にインコースを狙われただけでなく、巨人投手陣がアウトコースのボールを投げ切れなくなっていたということも絡んでいました。

 たとえば右投手が右打者のインコースに投げる場合、アウトコースに投げる場合よりもリリースポイントが手前になります。つまり、アウトコースに比べると肉体的に楽して投げられるのです。インコースに投げるフォームが体に染み付くと、アウトコースに投げる際にボールを長く持てず、結果的にキレや球威が失われてしまうのです。

 本当に強いチームには、投手の状態が悪くても配球や試合全体の組み立てでゲームメークできる捕手がいるものです。残念ながら、今の巨人にはまだそのレベルに達した捕手がいないように思うのです。今後のチームづくりにおいては、捕手の育成が大きな課題になるはずです。

 私は今でも、巨人に対して誇りと愛情を持っています。巨人には常に勝てるチームであり続けてほしいし、次こそは日本シリーズでソフトバンクを圧倒してほしい。40年間もお世話になった身として、心から願っています。

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