ファミレスを待機所がわりに売春をする未成年の少女。商売道具はスマホと体。スマホで男(通称、打ち子)がマッチングアプリで客引きをする。待ち合わせ場所に少女たちを行かせるデリバリー形式。未成年援デリとよばれている。

 書き込みのプロフィールと全然違う客が来たり、車でつけられてさらわれたり、警察の囮だったりもする危険でアンダーグラウンドな商売です。

「あたしらには消耗してる時間なんてない」

 そんな危険な場所だが10代で家を飛び出した少女たちの中には、ここでしか金を稼げない理由のある女の子も多い。

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そんな少女たちのリアルを描いているのが『アンダーズ〈里奈の物語〉』。

『アンダーズ〈里奈の物語〉』 ©文藝春秋

 彼女たちにとって携帯電話は大事な商売道具。いつ使えなくなるかわからない「トバシ」とよばれる他人に契約させた携帯のSIMカードを入手するところから始まる。それらを裏で売買する道具屋と関わりがあったり、ヤクザとの危険な関係もあったり……。

 客の中には“痛客”とよばれる問題客も多数存在。女を痛めつけないと満足しない客や、難癖をつけて金を支払わない客。

 法律で守られていない彼女たちは、自分たちの身は自分たちで守らなければなりません。

「どこ住んでんの?」「ラブホ」――家出少女たちのリアル

 そんな彼女たちの大きな問題の一つが住居。社会問題にもなっているネットカフェ難民ですが、実は年齢確認が厳しいため未成年は簡単に泊まることは出来ません。どこで今日寝られるか、寝場所を確保するのは大変なこと。

 作中の少女たちの寝床はラブホテル。値段はネカフェの倍以上。寝る場所のために援デリで稼ぐ子もいます。

『アンダーズ〈里奈の物語〉』 ©文藝春秋

 里奈はそんな場所で、少女たちが少しでも安全に安心して働けるように奔走する。「他の子の面倒を見る必要なんてない」「どうせ裏切られる」と周りの大人たちは腐らせるが、里奈は“みんなを守る”という一貫した行動原理で居場所を確保しようとする。しかしそれは家出少女たちが嫌う「組織」を作っていくことになる…。

『アンダーズ〈里奈の物語〉』 ©文藝春秋

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 現在、『アンダーズ〈里奈の物語〉』は1巻分が無料で読めます。家出少女たちの物語をお楽しみください。

アンダーズ〈里奈の物語〉 2

鈴木 大介 ,山崎 紗也夏

文藝春秋

2022年2月28日 発売

アンダーズ〈里奈の物語〉 1

鈴木 大介 ,山崎 紗也夏

文藝春秋

2021年6月24日 発売