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《芥川賞受賞》「タピオカミルクティー、パイナップルケーキ、マンゴー…苦手で食べられません」 台湾出身の作家、李琴峰が感じたカテゴライズの“痛み”

『彼岸花が咲く島』芥川賞受賞インタビュー

2021/07/16
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好きなアニメは『進撃の巨人』、『魔法少女まどか マギカ』

「好きなアニメのタイトルですか? 『進撃の巨人』とか『魔法少女まどか マギカ』、それに『ちはやふる』なんかが好きなんですけど、最近私にとっての傑作にあまり出逢えていないですね。声優ならば劉セイラさんを尊敬しています。彼女も母語が日本語じゃないのに、日本語を勉強して声優にまでなってしまったのはすごいです」

 今後も続々と、あっと驚く作品が登場しそう。次回作の構想が気になるところだが、「それはまだ言えないですね」とのこと。とはいえ作品を書くときにはいつも「カテゴライズされることに対する痛み」が通底するテーマとなっており、そこは変わらないだろうとも。

©文藝春秋

「日本に来て個人的にそういう体験をいくつも重ねてきましたしね。国籍や性別によるカテゴライズも根深い問題ですけど、もっと些細なところではたとえば、私は台湾出身なので『あ、じゃあタピオカミルクティー好きでしょ? パイナップルケーキは? マンゴーも?』とよく言われます。でも私、どれも苦手で食べられません。タピオカくらいなら本人が気にならなければいいかもしれないけれど、決めつけはあまりよくないですよね。

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 ただ、ここにちょっと葛藤があって、何かを書くという行為はカテゴライズすることと切り離せないんです。言葉を使うというのはつまり世界を切り分けるわけで、ある種の暴力性がついてまわります。じゃあどうすればいいのか。言葉を使わなければいいというわけにはいかないので、そうした暴力性にちゃんと自覚的であることがまずは大事でしょう。これからもいろいろ迷ったりするでしょうけど、考えを尽くしながら書いていきたいと思っています」

彼岸花が咲く島

李 琴峰

文藝春秋

2021年6月25日 発売

《芥川賞受賞》「タピオカミルクティー、パイナップルケーキ、マンゴー…苦手で食べられません」 台湾出身の作家、李琴峰が感じたカテゴライズの“痛み”

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