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大谷翔平の大活躍で検証 もし巨人の名投手が二刀流にチャレンジしていたら……

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/08/07
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通算310勝の大投手は打率.344、4本塁打をマーク!

 1人目は別所毅彦さんである。投手として通算310勝178敗、防御率2.18というとてつもない成績を残している。打撃成績もすごい。通算打率.259、本塁打35、安打500。投手で打率2割を超えるのも大変なのに、2割5分を超えている。

 実は打撃がよかったので、登板日以外に野手として出場したことがあったらしい。さらにバントのサインを出されたことがないという。そんな投手、聞いたことがない。

 そんな別所さんの打棒が爆発したのが、1950年である。この年、打率.344、本塁打4、打点28、OPS.915という信じられない成績を残している。間違いなく二刀流で成功したと思う。ちなみにこの年の投手成績は43試合に登板し、22勝11敗、防御率2.55、投球回314イニング。投打にわたり超人的な活躍である。優秀な放送作家のようである。そう、規格外(企画がいい)。

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 ただ別所さんの現役時代はかなり昔で、私は当然生で見ていない。プロ野球ニュースで豪快に笑う別所さんしか知らない。なので2人目は、実際にプレーを観たことのある方を選ぼうと思う。やはり桑田真澄さんである。

 その打撃のよさは高校時代から有名で、投手として甲子園歴代1位の20勝を達成しながら打者として歴代2位タイの6本塁打を放っている。ちなみに1位は清原和博さんの13本塁打。これは余談であるが、桑田さんは4月1日生まれなので翌日以降に生まれていたら清原さんより一つ下の学年となり、あのKKコンビはなかったのである。

桑田真澄 ©文藝春秋

 さらに余談となるが私が毎月出演している浅草東洋館の舞台は甲子園とよく似ている。青空の下、球児が汗かいて頑張ってる。青空球児・好児師匠、今も元気に「ゲロゲーロ!」やってます。あ、すいません、本当の余談でした。

 プロ入り後の桑田さんの打撃成績は通算打率.216、本塁打7である。やはり打率2割を超えている。特に凄かったのが1994年と2002年だ。

 1994年は投手として14勝11敗1セーブ、防御率2.52、打者として打率.288、本塁打1、OPS.689。2002年は投手として12勝6敗、防御率2.22(最優秀防御率)、打者として打率.294、本塁打1、OPS.798という成績を残している。

 打席数こそ少なかったが、2000年は19打数6安打で打率.316、2003年は24打数8安打で打率.333、代打の切り札として使いたくなる数字を残している。事実、桑田さんは2002年、横浜戦で代打起用され、バスターを決め安打を放っている。

 桑田さんも二刀流として間違いなく成功したと思う。篠塚和典さんは桑田さんのことを「打者としての印象が強い」と語っている。打撃練習の時から逆方向から始めて丁寧に打っていたそうだ。

 また、桑田さんはフィールディングも素晴らしかったから、どこでも守れたと思う。投手をやらない日はショートなんて夢がある。ただ実際、運動量の多いショートは二刀流としては負担が大きすぎるだろう。投手・桑田も凄かったが、野手・桑田も観てみたかった。きっと2つの意味で守備(首尾)よくこなしたと思う。

 今後二刀流の選手は出てくるのだろうか? 大谷選手の活躍を見るたび頭をよぎる。野球に興味がなかった人まで夢中にさせる大谷選手、そして二刀流。今、私たちは歴史的な選手のプレーを観ることができる。近々、妻はバーゲンセールに行くらしい。とことん二刀流が好きなんだな。バーゲンセールも……投げ売って(打って)る。

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