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ドラゴンズ一筋! 氣志團・西園寺 瞳が生で見届けた“中日優勝の瞬間”

文春野球コラム ペナントレース2021

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優勝決定試合に登場した“謎の男”とは……?

 直前のカードでまさかの3連敗を喫し、マジック1を残した中日は勝利か引き分けで自力での優勝が決まります。

 試合は投手戦で静かに始まりました。

 4回表には1アウト一、二塁でバッター四番ブランコという絶好の先制機を迎えますが、結果は最悪の併殺打。

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「ゲッツーかあ。相手に流れがいっちゃいそうだな……野球は流れのスポーツだからね」

 後ろの席ではデートなのでしょうか? 連れの女性に解説している男性の声が漏れ聞こえてきます。

 残念なことにその裏、彼の言う通り流れを失った中日は3点を先制されてしまいました。

「ほら、言わんこっちゃない!」

 後ろの彼は予測が当たって得意気ですが、こちらのイライラは募ります。

 重い雰囲気の中、試合は6回、先程チャンスを潰したブランコの意地の3ランHRでついに3-3の同点に!

「いいね! さすが四番だ!」

 後ろの彼も納得の大仕事です。

 その後、両チーム無得点のまま延長戦へ突入したところで試合時間は3時間半を超え、規定により新たなイニングに入る可能性がなくなります。

 最後の攻撃でも勝ち越せず、これで中日が優勝する条件はこの後の横浜の攻撃を0で抑えての引き分けのみとなりました。

「今日の優勝は無しか……」

 ……ん?

 後ろの彼が何か変なこと言わなかったか……?

「この回で試合は終わりだから、中日は良くても引き分けなのね。勝ちが無くなったので今日の優勝もなくなっちゃったんだよ」

 ええっ⁉ そうなの⁉

 あれ? マジックって引き分けでも減るんじゃなかったっけ? 知らないうちに変わったのか?

 確か今年は東日本大震災の影響で色々と変更点があったはず。俺が追えてないだけで、そのようなニュースがあったのだろうか?

 いやいや、マジックは2位以下のチームの優勝の可能性をも表すものだから、変更もクソもないはずだ。

 そもそも優勝条件が変わったとか? 勝率じゃないのか?

「?」だらけの思考の中、試合はどんどん進んでいきます。

 浅尾拓也が華麗なバント処理で一塁走者を封殺し、ついに2アウト。

 その素晴らしいフィールディングに拍手しつつも、このまま終われば優勝なのかどうかという、この試合における最重要事項があやふやなままで心はどうにも上の空です。

 そうこうするうちにその瞬間はやってきました。

 最後の打者を三振に打ち取った浅尾の元にナインが駆け寄り、大歓声の中マウンドに歓喜の輪が広がっていきます。

2011年10月18日、リーグ優勝が決まり歓喜の中日ナイン

「やっぱり優勝やないか~い!」

 心の中で昭和の漫才師のような盛大なツッコミを入れながら、私、西園寺は優勝を決めた選手達に、ようやく安心して心からの拍手を送ったのでした。

 いやあ、一時はどうなることかとヒヤヒヤしたけど(←ゲーム展開ではなく後ろの彼の勘違いのせいで)無事優勝して良かった!

 貴重な瞬間をこのような中途半端な気持ちで迎えてしまったのは大変残念でしたが、ともあれこれが自分にとって人生初の、そして今のところ最後の「現地での優勝体験」なのでした。

 あれから10年。思えばこれが中日にとっても最後の優勝となってしまっていますが、またいつか近い将来、今度こそはスッキリとした気持ちで優勝の瞬間を祝福できる日を心待ちにしています。

 頑張れドラゴンズ!

◆ ◆ ◆

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