「まだ今は考える余裕がなくて、娘と一緒にいてあげることしか考えられません。すみません……」

 自分の息子が、6歳の自分の娘を死に追いやってしまったという壮絶な状況を、事件から5日経っても母親は理解できずにいるようだった。滋賀県大津市の17歳の少年が6歳の妹に暴行を加えて死亡させたとして逮捕された事件。2人の母親は文春オンラインの取材に、初めて現在の心境を語った。

 8月1日、大津市の閑静な住宅街の小さな公園で、近所に住む小学校1年生のMちゃん(6)が死亡する事件が起きた。

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Mちゃんが倒れていたジャングルジム Ⓒ文藝春秋

 午前9時40分頃、Mちゃんの兄で17歳の少年が近くの民家のインターホンを押した。少年は「妹がジャングルジムから落ちた」と助けを求め、その住人が救急車を呼んだ。Mちゃんはすぐさま病院に搬送されたが、1時間後に「外傷性ショック」による死亡が確認された。

 Mちゃんは当初、事故死したと見られていたが、8月4日に滋賀県捜査一課はMちゃんの兄を傷害致死の疑いで逮捕した。逮捕容疑はこの兄が、7月下旬ごろから8月1日に、自宅で、妹の腹や背中、顔などを足蹴りしたり、殴るなどの暴行を繰り返し、死亡させた疑いだ。捜査関係者によれば、「Mちゃんの体には皮下出血の痕が100カ所ほどあり、肋骨が複数折れていた」という。

 県警は「妹がジャングルジムから落ちた」という兄の申告は虚偽だとみて、Mちゃんの死の経緯を調べている。

「あのジャングルジムは棒の間隔が狭いので…」

 取材班は8月1日、Mちゃんの兄に助けを求められ、救急車を呼んだ民家の住人に話を聞くことができた。

「あの日、インターホンが鳴ってドアを開けると、少年が慌てた様子で立っていました。急いで一緒に公園に向かい、ジャングルジムの下でぐったりと女の子が倒れていているのを見つけ、すぐに救急車を呼びました。気が動転していたので、意識があるかどうかはわかりませんでした。少年の外見は茶髪にTシャツ姿で、どこにでもいる普通の少年に見えました。ニュースで逮捕されたという報道を見て驚いています」

Mちゃんが倒れた公園の入り口 Ⓒ文藝春秋

 公園の近くに住む別の住人は、1日に少女がジャングルジムから転落して死亡したというニュースを聞いて不思議に思ったという。

「あの公園のジャングルジムは、高さは3メートルほどありますが、鉄の棒の間隔が狭いので子供が遊んでいてもまず真下には落ちないんです。事件が起きた後、警察の方が、公園近くに設置してあった防犯カメラの映像データを回収しているのも見かけました。実はあの公園では数年前に高校生の男子生徒が滑り台で首吊り自殺をしたことがあって。また人が亡くなったのか、縁起が悪いと思ったんです」