開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月25日)。
* * *
「黒服の男性に案内され、ソファに座ってしばらく待つとスタッフの女性が席のところへ歩いて来ます。30年以上通っていますが、この瞬間が一番ドキドキしますね。暗い店内では音楽が大音量で流れていて、ミラーボールがたまに反射して眩しいんですよ」(ピンサロ常連の50代男性)(全2回の1回め/後編を読む)
ピンクサロン(ピンサロ)は、法的にはキャバクラなどと同じ「店員の接待が可能な飲食店」である。店内での流れは以下のようなものだ。
来店した男性は申し訳程度のついたてに仕切られた席に誘導されると、そこへ店員の女性が近寄り、2人はすぐに“自由恋愛”に落ちる。すぐに2人は体を絡め女性は服を脱ぎ始め男性の服も脱がされていく。行為はエスカレートしていくが本番行為はなく、客の男性は女性の口や手の中で果てる——。
男性が店に払う金額の相場は30分3000~7000円ほど。軽食やアルコールのメニューもあるが、頼む客はほとんどいない。
訪れた男性客と女性スタッフが“自由恋愛”で性交に至るソープランドなどと異なり、低料金の風俗として全国の繁華街に数多く存在している。
警視庁が踏み切った“異例”の摘発
警視庁は今年5月から都内のピンサロを2店舗相次いで摘発した。この摘発は「極めて異例のものだった」と全国紙社会部記者が説明する。
「摘発されたのは、上野の『マジックバナナ』と、巣鴨駅近くの『曙』の2店鋪です。5月に行われた『マジックバナナ』の摘発では、店の経営者や店長、女性従業員、さらに客を入れた計6人が公然わいせつ容疑で逮捕されました。7月に行われた『曙』の摘発では、女性経営者らが同容疑で逮捕されています。『他人に見える場所でわいせつな行為をしていた』というのが摘発の理由です。ピンサロと言う業態が生まれてから50年以上が経ちますが、警視庁がピンサロ店に対して、公然わいせつ罪を適用して摘発したのは史上初のことです」
「マジックバナナ」の関係者で、警視庁に逮捕された男性は匿名を条件にこう話す。
「5月22日の昼過ぎに、突然10人以上の警察官が入ってきました。お客さんは少ない時間帯ですが、数人はいらっしゃいました。警察官に『(周りの人から)脱いでいるところが見えますよね、公然わいせつに該当します』と言われ、その場で逮捕されました。この業態はどこの店でも同じですし、うちはむしろ席の間の仕切りなども1メートルほどあり、見えにくい方なのですが……」