改札口にも立っています
実は富澤駅長、駅で働いた経験は1993年に入社してからわずか4年ほどだという。
「入社直後に岡山駅、その後新神戸駅で、駅長の下につく助役を務めたことはありますが、乗務員区所や人事関係の部署での勤務が中心で、駅の経験は少なかったです。ですから、博多駅長の内示を受けたときには不安もありました。ただ、駅にはその道の長いベテランもいますから、助けてもらいながら一緒にやっているところですね」
というわけで、出勤しても駅長の椅子に座っていることはあまりなく、積極的に改札口に立って他の社員とともに接客に勤しんでいるとか。社員にしてみれば、上司が現場で一緒というのはいかにも緊張しそう。迷惑がられていませんか?
「社員から改札に応援に来てほしいと呼ばれてもいないのにホイホイ出ていきますからね(笑)。まあ、もう慣れていると思いますよ。それに、私にとっては社員に教えてもらうこともたくさんありますし。案内一つとっても、私は博多に観光で何度か来た程度でしたので、聞いているだけで勉強になります」
博多駅には3人の駅長がいる
駅での経験が少ないがゆえ、富澤駅長は“現場主義”を貫いているというわけだ。では駅長が耳にする、博多駅利用客の質問あるあるで多いのはどんなもの?
「最初は観光地について聞かれることが多いかなと思っていたのですが、実際にはコンサートとかイベント関連の会場までのアクセスを聞かれることが多いですね。福岡にはヤフオクドームがあって、いつも何かしらのイベントをやっているので、『どうやって行けば一番早いですか?』と。博多駅からヤフオクドームには、地下鉄でも行けますが、最寄り駅から少し歩きます。バスなら直通で行けますが、渋滞を気にされるお客様もいるのでその辺を考えながらご提案をしたり……。あとは『これから長崎に行くんだけど、2、3時間博多で時間を潰すので見に行けるところはありますか?』というパターンも。これは私がまだ博多の街に詳しくないので……良いご提案ができるように勉強中ですね」
ちなみに、博多駅には3人の駅長がいる。富澤さんが務めるJR西日本山陽新幹線博多駅の駅長と、JR九州、そして福岡市地下鉄。博多駅に乗り入れるJR在来線は新幹線車両を利用する博多南線以外はすべてJR九州。そのあたり、寂しさはないのだろうか。
「それはないですね(笑)。前任の駅長からはJR九州さんとも良い連携を取らせていただいているという話を聞いていましたし、そもそもお客様にとってはJR九州もJR西日本も関係ない。JR九州さんには観光列車がたくさんあるのでそれについて聞かれることもあります。そこで『ウチはJR西日本なのでJR九州については知りません』とはご案内できませんからね。定期的に勉強会をして交流を深めていますし、山笠のお祭りなどイベントに一緒に出席させていただくこともあります。夏休みのイベントには、JR九州、地下鉄の博多駅長と一緒に出席しました」