駅長とは、読んで字のごとく駅の長、トップである。もっと簡単に言えば、駅で一番偉い人。例えばJR東日本東京駅の駅長が同社の役員にも名を連ねているように、駅長というのはなかなかスゴいのだ。では、そのスゴい人、駅長さんは普段どんな仕事をしているのだろうか。そこで、「駅長の仕事とは何か」という疑問を、JR西日本博多駅長の富澤五月さんにぶつけてみることにした。富澤さんはJR西日本の新幹線駅では初めてとなる女性駅長だ。やっぱり駅長さんの仕事は、一番列車の「出発進行!」の合図とかなんですか?

JR西日本博多駅長の富澤五月さん

駅長には駅長権限というものがありまして

「いえいえ、“出発進行!”はしませんね。基本的には駅に所属している社員たちをまとめ、職場の環境をマネジメントしていくのが駅長の役割になります。駅の仕事には、いわば“営業”と言える、改札口に立ってお客様にご案内したり、みどりの窓口できっぷを発売する仕事と、ホームに立って案内放送をしたり、お客様の安全を守る“運転”の仕事があります」

 JR西日本博多駅には約120名の社員がいるという。交代で勤務につき、常時40~50名くらいが働いている。その彼らのマネジメントをしつつ、時には列車の運行にも関わる判断を下すのが駅長というわけだ。

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「新幹線の運行は東京にある指令所で管理されています。ですが、博多駅の状況は博多駅にしかわからない。今年は台風が来て列車が遅れたことがありました。また列車の遅れではないのですが、お盆の時期など多くのお客様にご利用いただいた際に、駅のホームに多くのお客様がお待ちになることがあります。そこで、乗降に時間がかかると判断すれば、発車をちょっと待ってもらうなど、スムーズなご乗車のために駅の社員の誘導をする場合もあります。駅長には駅長権限というものがありまして、関係する社員と共にそういう判断をしています」

 

 安全はもちろんのこと、ダイヤを守った安定運行にも駅長は大きな役割を果たしているのだ。いかにも緊張感がありそう……。

「いえ、もちろん私一人でできる仕事ではありません。駅のホームで運転の仕事をする者には駅長代行の肩書もありますので、駅の仕事を長くしてきた社員の力を借りながらです。トップとは言え、私の独断だけで判断するようなことはありません」