東京タワー、浅草寺、皇居、両国国技館……。日本の首都・東京には数多くの名所が存在する。

 そんな中から、知名度にとらわれず、東京の「多様性」「歴史の多層性」に着眼し、よりよく楽しむための「視点」を紹介した一冊が、ライター・編集者の岡部敬史氏による『見つける東京』(東京書籍)だ。ここでは同書の一部を抜粋。写真とともに、意外と知らない東京の魅力的なスポットを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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坂道は昔から東京の名所だった

 武蔵野台地の東端に位置している江戸の町には、古くから名所のように親しまれてきた坂が多い。

明神男坂 撮影:山出高士

 そのひとつである写真の「明神男坂」は神田明神の東側に位置する急な坂道。ここに階段ができたのは、江戸時代に神田の町火消したちが石段を奉納したことがその由来とされている。

 台地の上の「山手」と台地の下の「下町」は、こういった坂がひとつの境界になって分かれていたのだ。そんな坂道には近年、命名されたものもある。

夕焼けだんだん 撮影:山出高士

 そのひとつがJR日暮里駅の北口から西に進んだところにある「夕焼けだんだん」。1990年にこの地の坂が改装された時に命名されたもので、西向きに坂が降っていることもあって夕焼けの名所としても名高い。坂道は近年、その歴史や見た目の面白さも相まって東京の観光名所のひとつにもなっており、関連書籍も多数刊行されている。東京の町歩きには「ちょっと近くの坂を見ていくか」という楽しみ方もあるのだ。