2021年に開催された東京五輪開会式の演出でも注目を浴びた「ピクトグラム」は、言葉が違う国の人々にも同じように容易に理解できる「図記号」として世界各国で広く活用されている。

 しかし、1960年代まで各国で統一的な規格は存在しておらず、また、今も規格がさまざまであるため、世界には国の“らしさ”があふれる数多くのピクトグラムが存在する。ここでは、駅や空港のサインデザイナーである児山啓一氏が世界26か国80都市のピクトグラム約1000点の写真を収録した『世界ピクト図鑑』(BNN)の一部を抜粋。ユニークなピクトグラムの数々を紹介する。

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非常口は世界共通ではない

《非常口》ボーイング787 ANA
《非常口》ボーイング787 United Airlines
《非常口》エアバス320 ANA

 ISO(編集部注:国際標準化機構)のピクトはボーイング787 にも採用された、と喜んでいたところ、米国では赤文字のEXITになっていてがっかりした。エアバスではドイツの規格DINによるものか、頭が半分胴体に埋まった図形が使われていた。

《非常口》トルコ イスタンブール空港

 非常口はISO、DIN、米国の赤文字の3種類に大別され、それぞれの国で選択使用されている。危険や火事ということで赤色が使われることは分かるが、様々な試験で有効性が確認された緑色に統一してもらえれば、安全性が増すように思う。形は問わない。

世界のいろいろな非常口

《非常口》パリ フォーラム・デ・アール
《非常口》インドネシア ジャカルタ グランドインドネシアモール

「形が自由でも緑色なら非常口と分かる」の実験のような場所がパリにあった。ジャカルタのショッピングモールでは階段を転げ落ちるように避難する姿が緊迫感を伝える。

《非常口》ニューヨーク 地下鉄

 ところでニューヨークの地下鉄は出口を赤色で表示しているので、通常の出口と非常口が重なってしまう。これについては安全性が増すという考え方と別にすべきという考え方が拮抗していると聞く。

《非常口》ニューヨーク JFK国際空港(2016年撮影時の非常口は赤色)

 JFKでは将来、非常口の緑と揃えるために地上交通出口関連の誘導を緑地にしたが、非常口が赤のままではその理論が成立していない。