公共空間の禁止ピクト
公共空間では、壁や柵に登るなど危険な行動の禁止と、動物を含む自然に対する禁止行為がピクト化されている。動物は、ハトへの餌やりなど動物に害を与えないようにするピクトと、自分自身がけがをしないためのピクトがある。
チェスキー・クルムロフの熊園はそのよい例だ。ウィーンの公園の7連発リボルバーのようなピクトは、やさしい色づかいと穏やかな表現で、公園の雰囲気と程よく調和している。シェーンブルンの3連ピクトはすべて禁止なのだが、管理者が異なるので形も異なる。
その他やってはいけないこと
その他、やってはいけないこととして、過度の飲酒、しつこい物売りなどのピクトを発見したが、最も面白かったのは中国の爆竹、花火類の禁止ピクトだ。よくもこれだけの禁止行為があるな、と感心するほどのピクトが列挙されていて、裏返すと中国国民の熱狂的な愛好イメージが浮かんでくる。
最後はモラル中のモラルピクト。このようなピクトがあるということは、このようなことをする人がいる、と言うこと。言葉で伝えるよりも分かりやすいが、ちゃんと警告が伝わるピクトでありたい。
警告と注意の違いは?
黒枠三角形で黄色地のピクトは、JIS では「注意」として一括りにされているが、ISの安全の分野ではDanger(危険)、Warning(警告)、Caution(注意)という言葉が使われている。それぞれの分かれ目は曖昧だが、要はホームからの転落や感電のように死に至る危険性がある「危険」「警告」から、滑ってしりもちをつく程度の「注意」まで、世の中には注意を払わなければならないことが山ほどある、ということだ。こうしてみると、感電はともかく、階段踏み外しや路面スリップなど足元に関するものが圧倒的に多い。いかに我々二足歩行動物のバランスが危ういものかを表している。
この他に、自分の振る舞いに対して注意を促すものがある。スキポール空港のサインは、作者曰く、長財布を尻ポケットから半分出したまま、荷物を忘れて買物に奔走する旅客(主に日本人)に対するもの。「注意」という言葉を使わず、「あなたが自分の身の回りに気をつけてくれることで(犯罪は減るのでその結果)我々空港職員は助かります」という婉曲表現が簡潔なイラストで表現されている。