いまや大きな社会問題となっているデジタル遺品。今回は、PCやスマホをはじめとするデジタル遺品を残したまま親族が亡くなり、自分がその処理を任された場合の対応方法について、デジタル遺品研究会ルクシー(LxxE)理事の古田雄介氏に聞いていきます(♯1、♯2も公開中)。
◆◆◆
親族のデジタル遺品、まずどこをチェックすべき?
──自分が亡くなることを想定して対策を行っておくのも重要ですが、親族が亡くなって、残されたデジタル遺品の対応をしなくてはいけなくなるケースも、これから増えてきそうですね。むしろこちらのほうが喫緊の課題といえるかもしれません。
古田 はい。大変なのは、亡くなったご家族がどんなふうに使っていたのかさっぱりわからない状態でデジタル遺品の対応をしなければいけない時ですね。対応するのがあまりパソコンやスマホに詳しくない人だった場合はなおさらです。ただ、パスワードさえ分かってパソコンやスマホの中身が見られる状態でさえあれば、大変ですけどどうにかなります。
スマホであれば、購入した時の箱に契約書類を一緒に入れている人は多いと思いますが、そこにパスワードのヒントが書いてあるかもしれません。パソコンも同じで、周辺の箱や購入時した頃に使っていた手帳、通信契約関連サービスの郵便物を調べるという、アナログなやり方でヒントを見つけていくのがいいと思います。近道はありませんが、とはいっても魔法がかかっているわけではないので、やりようはあります。
──無事にパソコンやスマホにログインできたとして、具体的にどこを見るべきなんでしょうか。
古田 パソコンであればメールの履歴、スマホであれば通話履歴とメールの履歴ですね。あと両方にいえるのは、ブラウザの履歴。つまりインターネットで何を見ていたかですね。それとブックマーク。よく使うサイトはそこを見れば分かります。それ以外に、スマホであれば金融機関のアプリやPFM(Personal Financial Management)系のアプリをインストールしているか否かをチェックするのも重要ですね。
自力でできない場合は、詳しい知人や友人を探して任せるという方法もありますが、任せられる側からすると相当なプレッシャーなんですよ。何故かと言うと、まったく知らない、友人の家族のパソコンをいきなり解析させられて、例えばそこで不倫相手の写真を見つけてしまったとして、その友人に伝えてよいものかどうか。つまりパソコンなどの技術と関係ないところで気遣いが必要になってくるので、あまり負担をかけるのは酷なんですね。頼る場合は実作業のみにして、判断の責任は自分が負うという姿勢が肝心です。
だから原則として自力でなんとかするしかないわけですが、この場合でも、何を必要としているのか、どこまでチェックするかをきちんと目標設定して、そのうえで対峙するのが重要です。例えば遺影写真が必要なだけの場合もありますし、あるいはネット銀行や株取引など、お金にまつわる情報を根こそぎ探したいという場合もありますし。
指紋認証、虹彩認証は障害になるか?
──最近はパスワードに代わって指紋認証や虹彩認証などセキュリティ性の高い認証方法が普及しつつありますが、こうした認証方法が障害になることはないですか。
古田 どの認証方法も、設定時に予備のパスワードの登録が求められますので、それを使えば問題ありません。基本的に、市販のデバイスはFIDO(Fast IDentity Online )アライアンスという団体のガイドラインに則って、生体認証と予備パスワードは必ずセットで登録する仕組みになっていますから。
──何回かパスワードの入力に失敗すると自動的に消去される設定というのをよく見かけますが、これについては何か有効な対策はあるんでしょうか。遺族もしくは遺族から作業を託された人にとって、非常に怖い仕組みですよね。
古田 現状のiPhoneやAndroidであれば、3~4回のチャレンジは問題ありません。5回以上連続でミスすると、「○分後に再度試してください」といったメッセージが表示されますが、その裏で端末に一段階高いロックがかかって、その後の復旧の可能性を狭めます。1~2回試してうまくいかなかったら一旦落ち着いて、残りの候補を厳選してもう1回か2回試してみる。それでダメなら、確実なパスワードが見つかるまでは触れないようにするのが安全だと思います。
第1回でも触れましたが、指定された回数を超えてパスワードを間違えてデータが消去されると取り返しがつきませんので、デジタル遺品を扱う際、遺族できちんと話し合っておくのは重要ですね。