今年1月、NHK会長を退任した籾井勝人氏(74)が、月刊『文藝春秋』のインタビューに応じ、在任中の出来事を振り返った。
2014年1月に会長に就任した籾井氏は、着任早々の「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」という発言をはじめ、様々な言動で物議を醸した。そんな籾井氏には、いまでも一つだけ納得できないことがあるという。退任直前に自ら提案した受信料値下げが、経営委員会で却下されたことだ。
籾井氏はこう言う。
「NHKでは、老朽化が進む東京・渋谷の放送センターの建て替えを計画しています。2020年の東京五輪後に着工予定で、建設費は1700億円。この費用を捻出するべく、2012年度から建設資金を積み立ててきたのですが、2016年度に目標の1700億円に到達し、さらに200億円の剰余金が出たのです」
NHKの収入の大部分は、国民が支払う受信料だ。受信料を支払っているのが4000万世帯とすると、建設費の1700億円を積み立てるのに、1世帯につき約4250円を負担した計算になる。建設費が余ったのなら、国民に還元するべきだというのが籾井氏の主張だ。
しかし、籾井氏が月額50円の受信料値下げを経営委員会に諮ったところ、委員たちは口々にこう反論したという。
「受信料はいったん下げたら上げることができなくなる」
「4K・8K放送(映像の解像度が高い放送)や、解禁が予想されるインターネット常時同時配信などで、これからもっとお金がかかるかもしれない」
こうした反対意見は理解に苦しむとして、籾井氏は「いまからでも値下げを実現させてほしい」と語る。
「番組内容に介入されたことはないが、(局内の)人事に関してはいろいろな話があった」という政権与党との関係や、嵐やジャニー喜多川氏など意外な芸能関係者との交流も明かした籾井氏のインタビュー全文は、『文藝春秋』12月号に掲載されている。