再び首位陥落(9/22)。奪取したのは、巨人ではなくヤクルトだ。陥落は悲しい。が、せめてもの救いは首位がヤクルトであること。前回ここで書いたように、「1位阪神、2位巨人」という並びの優勝は70年を超えるセリーグの歴史で一度もない。今年もこの通りであれば、阪神が優勝できる条件は「2位ヤクルト」が必須となる。願わくば、三つ巴の戦いからヤクルトとの一騎打ちへと移行してほしい。
まあ、現実には、このまま団子状態がつづくのだろう。
そう考えるほどに、一つの負けが悔やまれる。とりわけ、負けないで済んだかもしれない試合での敗戦は悔やんでも悔やみきれない。しかも、その負けの理由が自分にあるとしたら……? 他のファンに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
今回の首位陥落は、私のせいではないかと思った
いや、何を言っているんだ、負けの理由が自分にあるだって? 一体、何様のつもりだ。
そんな批判もあるかと思う。むろん、一ファンの力でチームの勝敗が決するなどとは思っていない。むしろ、逆だ。一ファンの力などほとんどとるに足らない。とてもささやかでちっぽけなものである。そして、そのささやかでちっぽけであることを熟知するがゆえに、自分のちょっとした動きがチームに迷惑をかけることを恐れる。このように思ってしまうのが、ファンという生き物なのだ。
競技は異なるが、サッカーJ2リーグのチームを応援するサポーター、ファンたちの日常を追った小説『ディス・イズ・ザ・デイ』(津村記久子著)には、このような一文がある。
「二人の間で常に一致している意見は、私たちが観ると負ける、ということだ」(p230)
現地で応援すると負ける。そう思うがために、「昇格」のかかる最終節の試合をテレビ観戦することに、二人は合意する――。
なんとも健気なファン心理だ。
話を阪神に戻すと、実は、今回の首位陥落は、私のせいではないかと思った。
9月19日(日)、甲子園での巨人戦。私がテレビをつけたのは、ちょうど1回の裏の阪神の攻撃が終わった瞬間だった。巨人のエース菅野投手から先制点を奪っていた。よしよし、と言いたいところだが、曰く言い難い「やな感じ」を覚えつつ、そのままテレビ観戦をつづけた。すると、2回表、阪神先発のガンケルが先頭打者の亀井に打たれる。そしてそのままズルズルと負の連鎖が始まった。ヒットやらエラーやら重なり7失点。事実上、この回で試合は終わった。
どうして、「やな感じ」がしたまま見続けたんだ……?
私はその日、このように自分を幾度となく責めずにはいられなかった。
この話を、このコラム版タイガースのヘッドコーチ須賀くん(ミシマ社)にしたところ、「私も『自分が見ていると打たれる』はあります。こないだも私のせいで大谷投手の連勝を止めてしまいました」と衝撃の告白をした。大谷翔平選手並びに世界中のファンに伏してお詫びするほかない。
というわけで、今回は、阪神が優勝するためにファンができること(及び、してはいけないこと)をお伝えすることにする。
阪神が優勝するためにファンができること(及び、してはいけないこと)
まずは、前回同様、他チームのお力を借りたい。ベイスターズファンの松樟太郎さんには、かなり実践的アドバイスを頂戴した。
「相手のチームの選手の応援歌をつい一緒に口ずさんでしまった時、なんかよく打たれてる気がします」
つい、やってしまいがちな相手チームの応援歌口ずさみ。私もやってしまいがちなだけに、残り試合では慎みたいものだ。続けて松さんは、「山田哲人の応援などつい口ずさみがちなので注意が必要です」とも。首位争いの中で、大変重要な留意点と言えよう。
くわえて、不思議なルーティンも教えてもらった。
「自チームが守りの際、投手がファーストストライクを取った時に5回拍手したとしたら、セカンドストライクでは6回以上拍手するというように、徐々に回数を上げていくようにしています」
さらに――。
「アウトカウントも同様に、ワンアウトで10回拍手したら、ツーアウトではそれ以上、通常は倍くらいにするようにしています。なので、スリーストライクでスリーアウトになった際は、『こいついつまで拍手してるんだ』というくらい長くなります。そういう時はフェイドアウトするように音を小さくしていきます」
球場で応援する際、こうしたちょっとの変化をつけて選手に力を送る。これぞ、ファンというものだろう。