生活費を渡さない経済的DVが増加
夫は、出産を機に仕事を辞めた美帆さんに対して、「早く働いて金を入れろ。タダ飯を食うな」と頻繁に暴言を吐いていました。コロナ禍では、パートのシフト減などで稼ぎが減った妻に不満を爆発させたり、生活費を渡さないといった経済的DVが増えていると取材を通じて実感しています。
美帆さんは末っ子の出産後、仕事に復帰し、私の取材の半年前には正社員に採用され、夫から逃げるための足場を少しずつ固めていました。しかし、いやだからこそ、夫から逃げる選択にためらう部分もあったと話します。
通常、DVから逃れた女性たちは婦人相談所の一時保護所などに入ります。しかし、そこでは身の安全を確保するという理由から、携帯電話やインターネットは使用できず、外部とのコンタクトが取れなくなってしまいます。その間は通勤や通学ができなくなりますし、夫との接触を避けるため遠方への引っ越しを余儀なくされる人もいます。住み慣れた土地を離れ、それまで築いてきた生活基盤を失ってしまう場合も少なくないのです。
「どうして被害者である側の私たちが、仕事も生活環境も友人関係も奪われなければいけないの、という思いもありました。でもステイホームが続けば、夫に殺されるのではないかと思ったのも事実です」
家を出てから半年後には離婚が成立
美帆さんは以前からつながりのあった自治体の支援窓口を訪ね、民間支援団体が所有するシェルターを経て、アパートに入居。仕事を辞めず、テレワークの体制で3人の子どもと一緒に、安全に暮らすことができるようになりました。
子どもたちがよく笑うようになった、と美帆さん。
「元夫は勉強を教えると言っては、子どもができないのに腹を立て当たり散らしました。気分屋で感情を抑えられない人だったんです。子どもはお父さんの機嫌を損ねたくないので、いつも萎縮して家で過ごしていました。だからこそ今、特に上の子の甘えっぷりが増していますね。これまでの反動なのでしょうか」
調停を経て、家を出てから半年後には離婚も成立。しかし年収は児童扶養手当等を含んでも300万円に満たず、3人の子どもたちとの生活はギリギリの状態といいます。