もっとも、美帆さんの場合は比較的早く離婚が成立したケースでしょう。暴力から逃れ、家を出て別居をはじめた人の中には、離婚の話し合いが長期にわたり進まないケースもままあります。この場合、ひとり親世帯とはみなされないために、児童扶養手当等を受け取れません。こうした「プレ・シングルマザー」が抱える問題が存在することも、見逃してはならないでしょう。
さまざまな事情で家に居られない人たちの存在が顕在化
最初の緊急事態宣言下では、ネットカフェやファストフード店、24時間営業のファミレスまでもが閉まりました。これらの空間は、経済的な問題を抱える人、家庭内に居場所がない人などにとって、都会の貴重な“セーフティネット”として機能しているのだということをあらためて感じました。同時に、さまざまな事情で家に居られない人たちの存在が顕在化したということもできるでしょう。
「ステイホーム」とは考えてみれば、“良い家族幻想”のもとに唱えられているところがありはしないでしょうか。家族の絆を深める「#おうち時間」、幸せな家族の姿をSNSに投稿すること自体を否定するつもりはありません。ただ、安全に「ステイホーム」できない事情を持った人たちがいることを忘れてはならないと思うのです。
コロナ禍での「女性不況」
また、単身者の中には人と話す機会が激減し、孤立を深めている人もいます。特に中高年単身者の貧困率は非常に高く、孤立しがちですが、その困難に目が向けられることはほとんどありません。精神的なつらさを抱えている人や声が届きにくい人たちにもっと想像を及ぼすべきではないでしょうか。
またコロナ禍での雇い止めの影響は女性に集中しており、「女性不況」とも言われています。しかし、女性に集中している暴力や経済的困難は今にはじまったことではなく、コロナ禍以前から存在していました。それがコロナ禍という人類未曾有の危機によって深刻さを増し、あからさまになったに過ぎないのです。
社会の至るところに存在する「シャドーパンデミック」を見逃さず、拡大を防ぐこと。コロナ禍で顕在化した女性が置かれてきた構造的困難に目を向け、根本的解決を目指すこと――アフターコロナの時代に向けての重要な課題は、ここにあるのではないでしょうか。
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SlowNews連載「シャドーパンデミック」
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