「妊娠を相談できる人がいなかった」と語る24歳の女性。
出産した男の子の遺体を放置したとして、死体遺棄の罪に問われている。
同様の問題に数多く向き合ってきた医師は、妊娠に対する社会の理解が必要だと話す。
「妊娠を相談できる人はいなかった」
死体遺棄の罪に問われている川畑美幸被告(24)は2021年5月、当時の鹿児島市の自宅で、出産してまもなく死亡した男の子の遺体を袋に入れてベランダなどに放置したとされている。
川畑被告は初公判から一貫して、自身の妊娠や出産について「覚えていない」と話している。
しかし検察側は、川畑被告の検索履歴や供述などから、川畑被告は当時、妊娠について認識していたと指摘している。
さらに9月1日の被告人質問では、川畑被告が当時、両親が離島で生活していたことや、友人への借金があったことから、仮に妊娠や出産について相談しようとしたとしても「相談できる人はいなかった」と、社会的に孤立した状況にあったと語った。
そして、弁護側から「当時どうすべきだったか」と尋ねられると、「妊娠に早く気づいて、誰かに相談する。病院に行くとか何か行動すべきだった」と話し、過去の自分の行動を悔いた。
孤立出産を減らすため「社会の理解が必要」
川畑被告が周囲の誰にも相談しないまま、自宅で1人で出産して起きたとされる今回の事件。
1日の公判では、熊本県の慈恵病院の蓮田健院長が、弁護側の証人として出廷した。
慈恵病院では、親が育てられない赤ちゃんを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」を運営していて、蓮田院長は今回のような事件が起きる背景について述べた。
慈恵病院・蓮田健院長:
日本では、「どうして中絶しなかったのか」と、まず責められます。
だらしない女性たちが決断しきれないまま、避妊も中絶も決断しきれないまま、おなかが大きくなって無責任に出産して、揚げ句の果てに捨てた。そういった切り捨てられ方をされる
蓮田院長は、こうした現状をふまえて、孤立出産を減らすには社会の理解が必要だと話す。